県内寿命差の分布グラフを全体的に見ると、男性より女性の方が長寿である点は言うまでもないが、それ以外としては、男性の寿命差の方が女性の寿命差より大きいという特徴が、まず、目立っている。 男女ともにもっとも地域格差の大きい大阪では男性の場合は寿命差は10.0歳であるのに対して女性は3.6歳と比較的小さい。同じ川崎市の区が最長寿と最短命となっている神奈川では男は5.2歳に対して女は2.2歳、東京も男女とも世田谷区と足立区が両極であるが、寿命差は男3.2歳に対して女2.2歳と女性の方が格差が小さくなっている。 男性の寿命差が女性より小さいのは7県のみである。 県内の寿命差、すなわち寿命から見た地域格差が大きい地域はどこだろうか? 男の場合は大阪の箕面市と西成区の間など三大都市圏で県内寿命差が大きい。女の場合はこれに加えて高知の四万十市と三原村の間など地方圏の県でも寿命差が大きい場合がある。 3大都市圏で県内寿命差が大きいのは、一方で生活が恵まれた高級住宅地があり、他方でドヤ街など生活困窮地域が存在するという明暗の分かれた地域の並存が大都市圏の特徴となっているからだと考えられる。 特に独身の生活困窮者が女性より多い男性でそうした地域差による影響が大きいと言えるのである。 大阪の箕面市や兵庫の芦屋市、愛知の日進市は高級住宅地を抱えていることで有名である。川崎市麻生区や東京の世田谷区も似た性格をもっている。 ドヤ街やスラム街として代表的である地域は、東京の山谷(台東区北東部)、竹ノ塚(足立区)、横浜の寿町(横浜市中区)、川アの日進町・池上町(川崎市川崎区)、大阪のあいりん地区(大阪市西成区北部)、名古屋の笹島ドヤ街(名古屋市中村区)など3大都市圏に集中しており、県内短命地域ともかなり重なっている。 神奈川県の場合は、同じ川崎市の麻生区と川崎区で県内最長寿と最短命の地域が併存している点で目立っている。 千葉県内では銚子市が前々回2010年は男女とも最短命であり、「銚子は魚としょうゆの町というイメージ通り、しょっぱいものや濃い味付けを好む地域。平均寿命ワースト1ということを知らない市民も多い」と考え、減塩の啓発運動に取り組んだという(産経新聞2016.11.13)。しかし、なお前回2015年は男性が、今回2020年は女性が県内で最短命だった。短命に地域の生活習慣が影響している可能性は高かろう。 ただし、短命地域の中には、もともとの住民が短命というより、残された寿命が短い高齢者が移転してくる地域であるという理由の場合もありうると考えられる。静岡県の最短命地域は男女ともに熱海市であるが、熱海市は高齢者向けの療養施設や病院が多く、これが統計上の短命の要因となっているのではないかと私は考えている(図録7250参照)。他の地域でも案外こんな理由が影響している場合も多いのではなかろうか。 逆に、県内の寿命差の小さな地域としては、男では、富山県をはじめ北陸・山陰地方、女では香川県をはじめ瀬戸内海沿岸が多くなっている。 (2023年5月21日収録)
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