2020年以降、減少していた「騒々しい会話・はしゃぎまわり」が再度、上位を占め、また、「周囲の配慮せず咳やくしゃみをする」も上位を占めている点にコロナの影響がうかがえる。 また、鉄道駅へのエスカレーター・エレベーターの普及にともない新たに設けられた「エスカレーター・エレベーターの利用の仕方」が順位を上昇させている。 「ペットの持ち込み」も新たに項目として設けられたが、順位は高くないようである。駅舎を含めて全面禁煙となったのともない「喫煙」項目がなくなり、また、読む人がめっきり少なくなった新聞・雑誌の項目がなくなったのも時代の変化を感じさせる。 末尾に掲げた迷惑行為の具体像については、「座席を詰めて座らない」が最近、回答率が低下したのは、できれば1席おきに座るのがマナーとなったコロナの影響であろう。また、これはコロナとはかかわりないが、歩きスマホの弊害に対する回答率が上昇しているのも目立っている。 (2019年結果までのコメント) 駅や電車の中で感じる迷惑行為としては何が多いかについて日本民営鉄道協会が毎年アンケートを取っている。その結果の順位の推移を示した。 順位の元になった回答率は第1位の「座席の座り方」は41.3%、第2位の「乗降時のマナー」は33.2%、第3位の「荷物の持ち方・置き方」は32.0%である(2019年)。 順位の推移については、順位が余り変わらないものと順位の変動が大きいものとに分かれている。 順位が余り変わらないものとしては、
一方、順位の変動が大きいものとしては、以下が挙げられる。 (順位を上昇させたもの)
「騒々しい会話」が特に最近減ったのは、スマホばかりやっていてしゃべることが少なくなったからであろう。スマホの影響については、車内が騒々しくなくなったのは、ある種、プラスの効果だが、周囲の動きに無頓着になって、座りたい人のために席を詰めないといったマイナス面の方が気になる。 89歳になって40作目となる新作映画を撮り終えたばかりのクリント・イーストウッド監督はSNS全盛の世の中を「クレージーだ」と憂えている。「道を歩く人もレストランで食事をするカップルもみんな、全てを支配されたかのようにスマートフォンを見ている。以前はもっと周囲を見渡して耳を澄まし、いろんなことを吸収していた」(毎日新聞2020年1月21日夕刊)。 一方、大きく順位を上昇させた「荷物の持ち方・置き方」については、少しでも楽をしようとするニーズに応えたカバン製品の登場や流行、具体的には、リュックサック・ショルダーバッグやキャリーバッグの利用が増えたことによる。リュックサックについてはスマホを使うために両手を空けたいというニーズが強まっているためでもあろう。もっとも、2018年に1位となってから、次年の19年にかけては順位を下げており、車内における啓発もあってこの点に関するマナーがやや改善されたようだ。 「喫煙」は2017年まで順位を上げていたが、18年から「決められた場所以外での」と限定されたので順位が下がった。しかし、こうした限定がなければ、なお、高い順位だったと思われる。「決められた場所以外」で喫う人は論外であり、そもそも煙の流れ自体を迷惑だと感じる人が増えていると考えられる。 「荷物の持ち方・置き方」の迷惑とは何かという点は、下の「迷惑行為の具体像」グラフを見ると明快である。手提げバッグ派の私などは、「何故、自分の都合のために他人の迷惑をかえりみないのか」と、常日頃、ニガニガしく感じていることである。かつては一部の若者だけのものだったリュックサックを、今は、登山でもないのに、また出し入れが不便なのに、ビジネスマン、あるいは高齢者まで、常日頃、愛用しているのはどうしたことか? 「乗降時のマナー」の具体像で「扉付近から動かない」が増えているのは、やはり、扉付近でスマホを操作しながら自分の世界に入りこみ、乗降客の流れに気がつかない人が増えているためと思われる。 なお、2014年までは「混雑した車内へのベビーカーを伴った乗車」が選択肢として挙げられていたが、そもそも、これを迷惑行為の1つと考えること自体が適切でないとして、2015年以降は選択肢から除かれている。 (2018年12月21日収録、2019年1月23日地域別結果、12月20日更新、2020年1月21日クリント・イーストウッド言、1月24日順位のカウント見直し、コメント改善、2023年2月3日)
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