図は内航海運にとっての主要6品目のトンキロ分担率とコスト分担率とを対比させたグラフである(鉄道や倉庫等のコストは除いてある)。 鉄鋼、セメント、石油製品、ケミカル(化学薬品)のトンキロ・シェアは、それぞれ、内航船舶が74%、93%、88%、70%と7割〜9割を占め圧倒的であり、確かに、海上輸送は大きな役割を果たしているといえよう。一方、コスト分担率では、内航と港運の合計が海上輸送コストであるが、鉄鋼39%、セメント39%、石油製品59%、ケミカル27%と石油製品を除くとそれぞれトンキロ分担率のちょうど半分程度である。 海上コストには内航と港運が含まれるが、石油・ケミカルやセメントでは、タンカーやセメント専用船といった流体・粉体を圧送する装置を備えている船舶を利用しているためもあって港運の比率は小さいが、鉄鋼の場合は、内航が8%に対して港運が31%とコスト比率が高くなっている。 (図の意義) 品目ごとの輸送に関しては、白書などに自動車と内航船の輸送トンキロのシェアが輸送分担率として、しばしば掲げられるので、コスト比率もこれに比例していると考えがちであった。コスト比率をデータ的に明らかにした資料がこれまで作成されて来なかったためである。このため、海上物流の比率の高い素材産業の物流コストやその水準が問題となるとき、内航コストばかりが俎上にのせられる傾向があり、海陸一貫物流の全体最適の課題がややもすると見逃されがちであった。この図はこうした状況を是正するため作成したものである。 海上輸送には荷役等の港湾運送コストが含まれ、またトンキロ当たりのコストには自動車と内航船舶とで大きな差があるため、内航船舶の輸送コスト比率は輸送分担率に比べるとずっと小さいことに留意すべきである。 (リンク) この図を作成するきっかけとなった調査の結果報告書(「内航海運から見た素材型産業の物流コスト効率化に関する調査報告書」)は日本内航海運組合総連合会のホームページ(http://www.naiko-kaiun.or.jp/info/index.html)に全文掲載されているので興味のある方はご覧下さい。 (資料とデータの性格について) 運賃データの原資料は産業連関表である。産業連関表では各財について、需要家(消費者)が購入する購入者価格とそれから商業マージンと運賃をひいた生産者価格を算出している。何を使って何を生産しているかの全体構造を明らかにし、何かを生産するには何が必要かなどの投入・算出分析を行うためには流通マージンをいったん捨象する必要があるためである。各財の運賃は公式には調査されていないので、産業連関表の作成に当たっては各方面からの聞き取りや関連資料収集によって各運輸機関ごとの運賃を決定している。このようにここでの運賃データは統一的な調査統計の結果ではないので信頼性に限界があるが、上記の調査で別途調べた船種ごとの運賃データと大きくは乖離していないので当たらずとも遠からずの数字となっていることが分かる。 (2007年7月5日更新)
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