資本ストックの稼働率と同様に知識ストックの稼働率の指標をどう得たらよいか考えると、知識ストックが実際上はR&D額の積み上げで算出されることを考慮し、特許権の使用率(実施率ともいわれる)を代理指標として使用してみることも可能であろう。

 特許権の所有数と使用数に関しては、通商産業省、及び経済産業省の調査で定期的に調べられている。

 これらのデータから使用率を計算し、グラフにしてみると、高度成長期には30%以上あった使用率が、安定成長期には20%台前半まで低下し、その後、経済の長期低迷がはじまる1990年代以降、再び上昇をはじめ、近年特にその上昇率が高まっているというU字型のカーブを描いた使用率の推移が明確に見て取れる(図参照)。

 大きな傾向としては、当初、使用を前提に特許が開発されていた時代から、ハイテクの時代に入ると、使用する以上に一定の技術開発努力が継続され、使用率も低下した。ところが、企業の利益率が目立って低下した1990年代以降は、R&Dの効率化や特許管理の効率化(使わない特許でも維持コストがかかる)が目指されるようになったため、再度、使用率が上昇したのではないかと考えられる。

 最近は、再度、使用率が低下する傾向にある。所有特許数が持続拡大しているにも関わらず、使用特許数がそれほど増えない傾向にあるためである。実際に使用していないが他社の横取りや参入などを事前に防ぐ機能を果たす防衛特許が増えているからとも見られる。ただし、2013〜14年は再度使用率が上昇している。

(2005年4月20日更新、2009年9月16日更新、2010年2月9日更新、2011年7月30日更新、2013年1月22日更新、2014年6月23日更新、2017年1月25日更新)


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