ここでは、こうした変化を不破雷蔵氏が整理している統計データで見てみよう。 データが得られる2007年度以来、書店経由の紙媒体の出版物の購買額は減り続け、ネット経由で入手する紙媒体出版物と電子出版物の購買額は増え続けている。 2019年度までは「書店経由」の減少が「ネット経由」の増加を上回っていたため、両者を合わせた出版物購買額の計は減り続けてきていた。 ところが、新型コロナの流行がはじまった2020年度以降、「書店経由」の減少が鈍化し、「ネット経由」の増加が加速したため、両者の合計はむしろ増加に転じているという変化が生じている。 こうした変化の理由について、不破雷蔵氏は「これは新型コロナウイルスの流行で在宅勤務・学習の機会が増えて本を求める人が増加したのに加え、他人との接触を避けるためにインターネット経由で購買する人が増えたからだと考えられる」とまとめているが、確かにそうであろう。 そして、ネット時代の到来を象徴するように、2022年度にはついに「ネット経由」の出版物購買額が9,440億円とついに「書店経由」の出版物購買額の9,542億円を上回っている。 下図に出版物購買額のネット経由比率の推移を掲げた。2007年度には5.8%に過ぎなかったネット経由比率が、15年後の2022年度には50.3%へと急伸している。特に2010年代後半に増加幅が拡大し、新型コロナの流行がはじまった2020年度には増加幅が6.3%ポイントに達している。2021〜22年度には増加幅はやや落ち着いている。こうした推移に新型コロナによってリモート環境が促された様子が如実にうかがわれる。 参照図として図録5650からインターネット広告費比率の推移を再録した。両者は非常によく似た拡大推移のパターンを示している。新型コロナの流行がネット時代に拍車をかけたことは明らかであろう。 (2024年3月3日収録)
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