いったい一流企業の役員クラスはどの程度の収入を得ているのだろうか。

 役員報酬の開示ルールはこれまで、総額のみが開示対象だったため、役員1人当たりの平均報酬額から推定するしかなかった。これが内閣府令で、2010年3月期決算企業から報酬額1億円以上の名前と金額を明らかにし有価証券報告書に記載することとなった。このため、6月下旬に開催のピークを迎える上場企業の株主総会で、各企業がトップら役員の報酬を個別に開示するかどうかが注目されている。

 株主総会の招集通知に記載された役員報酬の総額から1人当たりの平均額を東京新聞が算出した結果をグラフにした。

 これを見ると外国人をトップに据える企業の役員報酬は高額である。カルロス・ゴーン社長が率いる日産は1億6900万円と自動車産業界で断然多い(ホンダ、トヨタ自動車は4〜5千万円)。またハワード・ストリンガー会長がトップを努めるソニーの役員報酬も1人当たり1億5600万円と電機業界では目立って高い。

 平均額が低くても創業者が長く社長を務める場合などではトップが1億円以上をもらっている可能性もある。

 有価証券報告書の公表に先立って株主総会で報告するかは未定であるが、いずれは1億円を越える個人額が明らかとなる。

役員報酬の平均額が5000万円以上の主な上場企業
会社名 報酬の総額 対象人数 1人平均
ファーストリテイリング 4億0200万円 2 2億0100万円
日産 16億9000万円 10 1億6900万円
ソニー 12億4800万円 8 1億5600万円
野村HD 14億5100万円 10 1億4500万円
アステラス製薬 4億2000万円 3 1億4000万円
日本マクドナルド 3億5900万円 3 1億1900万円
三菱商事 15億0200万円 13 1億1500万円
住友不動産 11億6400万円 12 9700万円
住友商事 14億0800万円 17 8200万円
任天堂 10億1500万円 13 7800万円
武田薬品工業 6億7300万円 9 7400万円
伊藤忠商事 9億8500万円 15 6500万円
信越化学 13億6500万円 23 5900万円
新日本製鐵 9億4100万円 17 5500万円
(注)報酬の総額は2010年3月期に支払った取締役または執行役の合計。1人平均の報酬額は100万円未満を切り捨て。企業によって内訳が示されている場合、社外取締役の報酬は除く。ファーストリテイリングは2009年8月期、日本マクドナルドは2009年12月期の金額
(資料)東京新聞(2010年6月11日)

 なお、同年6月の株式総会や有価証券報告書で個人別に役員報酬が明らかになった例を以下に掲げる。

主要企業で1億円以上の報酬が明らかになった役員
日産 カルロス・ゴーン社長 8億9100万円
志賀俊之最高執行責任者 1億3400万円
カルロス・タバレス副社長 1億9800万円
ソニー ハワード・ストリンガー会長兼社長 8億1650万円
中鉢良治副会長 2億1500万円
大根田伸行副社長 1億6400万円
大日本印刷 北島義俊社長 7億8700万円
東北新社 植村伴次郎最高顧問 6億7500万円*
信越化学工業 金川千尋会長 5億3500万円
森俊三社長 1億9700万円
秋谷文男副社長 1億9700万円
双葉電子工業 細矢礼二会長 5億1700万円
日本調剤 三津原博社長 4億7700万円
セガサミーHD 里見治会長兼社長 4億3500万円
富士フイルムHD 古森重隆社長 3億6100万円
高橋俊雄専務執行役員 1億3800万円
ファナック 稲葉善治社長 3億3100万円
野村HD 渡部賢一社長 2億9900万円
大東建託 多田勝美会長 2億5800万円
武田薬品工業 長谷川閑史社長 2億2300万円
アラン・マッケンジー取締役 5億5300万円*
任天堂 岩田聡社長 1億8700万円
宮本茂専務 1億2600万円
波多野信治専務 1億1400万円
新日本製鐵 三村明夫会長 1億7000万円
宗岡正二社長 1億7000万円
ロート製薬 山田邦雄会長 1億6000万円
日本板硝子 マイク・パウエル最高財務責任者 1億5800万円
スチュアート・チェンバース元社長 1億4100万円
マーク・ライオンズ執行役 1億2500万円
HOYA 鈴木洋最高経営責任者 1億5300万円
浜田宏取締役 1億1500万円
江間賢二取締役 1億0100万円
エーザイ 内藤晴夫社長 1億3600万円
ロネル・コーツ執行役 1億4000万円
丸紅 朝田照男社長 1億3500万円
日立製作所 川村隆会長 1億3400万円
住友金属工業 下妻博会長 1億3400万円
友野宏社長 1億2200万円
トヨタ自動車 張富士夫会長 1億3200万円
豊田章男社長 1億円未満
栗林商船 栗林定友会長 1億2400万円
パナソニック 中村邦夫会長 1億2200万円
伊藤忠商事 小林栄三会長 1億2100万円
丹羽宇一郎元社長 1億1500万円
ソフトバンク 孫正義社長 1億0800万円
東芝 西田厚聡会長 1億0700万円
(注)同年6月の株式総会や有価証券報告書で公表された2010年3月期の報酬総額。ストックオプションや連結子会社の役員報酬を含む。例えばソニーのストリンガー会長兼社長は現金約4億1000万円に加え、50万株の株式購入権(ストックオプション)も与えられているので上記の金額となる。金川信越化学会長、野村HD渡部社長も自社株購入権を含む。*退職慰労金を含む。
(資料)新聞各紙

 日産のゴーン社長は6月23日の株主総会で、年間配当を見送っているのに役員報酬が高額だとする不満の声に対して、日本標準ではそうかもしれないが、世界標準では驚くような水準ではないと反論した。「ゴーン社長は、コンサルティング会社に依頼して調べた直近の欧米大手自動車メーカー最高経営責任者(CEO)の年間平均報酬は10億900万円、他業種も含めた大手企業では11億8000万円だったと説明。自身の報酬は「決して高くはない」としている。」(東京新聞2010年6月24日)

「任天堂も有報で1億円以上だった6人の報酬を正式に開示し、岩田聡社長が1億8700万円、「マリオシリーズ」の生みの親とされる宮本茂専務が1億2600万円など。信越化学工業は、20年間社長を務め、29日に会長となった金川千尋氏がストックオプション(自社株購入権)を含め、5億3500万円となるなど、5人が1億円を超えた。」(毎日新聞2010年6月30日)

「日本人の最高は、30年以上トップを務める北島義俊・大日本印刷社長の7億8700万円で全体の3位。このほか東北新社の創業者で81歳の植村伴次郎最高顧問が退職金も含めて6億7500万円、84歳の金川千尋・信越化学工業会長が5億3500万円など、上位には在任期間の長いベテラン経営者や創業家出身者が目立った。一方、トヨタ自動車やホンダ、日立製作所、東芝など代表的な製造業の日本人トップの報酬は最高でも1億円台に抑えられており、外国人トップとの格差が浮き彫りになった。」(時事通信2010年6月30日)

(2010年6月16日収録、6月21日・23日・24日・28日・7月1日・7月2日個人別役員報酬と関連コメント追加)


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