ところが、一般には余り知られていない事実であるが、図のように、この日本市場に占める輸入品の比率は、2006年には、45.4%の高さに達している。生産額に占める輸出比率は31.2%であるので、はるかに輸入超過となっており、国民生活の安全確保、あるいは、医療費支出の海外流出といった観点から医療関係者の間では憂慮する声も聞こえる。こうした大きな輸入超過は、旧来からの状況ではない。1980年代には、輸入比率は20%前半のレベルであり、ほぼ輸出比率と同等であったのであり、1990年代以降、大きく輸入超過の状況が進展したのである。 こうした輸入超過は、日本企業のアジア進出に伴って家電製品などでも見られる現象であるが、医療機器の場合は、欧米、特に米国からの輸入増大がこうした状況をもたらしている点で大きく異なる。医療機器輸入の6割以上は米国からのものであり、またこの10年間の輸入増大の6割以上は米国によるものなのである。 医療機器の輸入比率はこの十年に倍増となったが、その理由として、日本は需要の拡大の著しい治療機器の分野が弱く、輸入比率も高いという点が指摘されることが多い。図では、主要な医療機器に関して、診断機器と治療機器に分けて集計し、医療機器全体と同様の指標をとって示した。 これを見ると、確かに診断機器では輸出超過となっており、治療機器での輸入超過と対照的になっている。国内出荷額の伸びも治療機器の方が高く、図で掲げた主要機器の合計では1980年代後半にはほぼ同等の規模であったのが、現在は治療機器が2.5倍の規模を有するまでになっている。こうしたウェイトの変化が輸入増に結びついていると言える。 しかし、我が国の技術力が比較的高いと考えられている診断機器のみを見ても、輸出比率が横ばいであるのに対して、じりじりと輸入比率が上昇してきており、この点も医療機器全体の輸入比率の上昇に寄与していると言わねばならない。 医療機器の国際競争力において日本が後れをとっている要因については、以下の報告書、及び論文を参照されたい。 (参考文献) 1.経済産業省関東経済産業局「開発型中堅・中小企業が目指す社会需要拡大に関する調査」調査報告書(医療機器産業の現状と課題)、2003年3月、プロフィールページ参照 2.本川裕「医療機器産業から見た日本の産業競争力」2003年5月、財団法人国民経済研究協会学術刊行物「国民経済」166号 (2005年4月17日更新、2008年8月14日更新)
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