まず、目立っているのは、産業向けサービスの価格が何れの国に対しても、他の製品と比して高価格であり、中間財を使用する日本産業にとっては高コストとなっている点である。代表的なサービスとしては、不動産、運輸、通信の何れについても、このことは当てはまっている。モノと異なって、サービスは国際競争にさらされておらず、規制に守られていたので、工業製品のようには生産性が向上せず、その結果として割高になっていると説明されるが、全体としては、こうした説明が説得力を持っている。(内航貨物輸送の内外価格差については末尾の備考を参照) 素材製品の内外価格差は、平均すると、対欧米に対しては同等かむしろ安い水準にあるが、対韓、対中では、1.47、1.72と5〜7割ほど高くなっている。 対韓や対中の内外価格差を加工・組立製品について見ると、それぞれ、1.90、8.77と素材製品を大きく上回っている点が注目される。 すなわち、韓国や中国では、日本との関係においては、人材や資本といった資源を素材産業より加工・組立産業に投入した方が、利益が上がる訳である。こうした比較優位の関係から、素材製品はむしろ日本から輸入し、組立製品を日本へ輸出する方向へドライブがかかっていると考えることが出来る。 なお、ここで調査されている内外価格は税金や利益を含んだ製品価格なので、購入企業にとってのコストではあるが、必ずしも中間財産業の生産コストをあらわしていない。例えば、日本の石油製品価格の半分は税金である。 (備考:内航貨物輸送の内外価格差) 内航貨物輸送の内外価格差もこの「産業の中間投入に係る内外価格調査」(経済産業省)によって調査され、「産業向けサービス」の内外価格差の一部となっているが、調査結果を見ると対米、対独、対中の値が5.23、6.56、3.28となっており(平成14年度)、内航輸送が高いとの見方につながる結果となっている。この結果は、内航海運や内水に係る運賃の内外価格差は欧米との間でほぼ同等かやや日本優位とする内航海運組合総連合会の調査結果と著しく乖離している。この点については、経済産業省の調査が日本の定期用船料(船員費等を含む)と米独中の裸用船料(船員費等を含まない)とを比較したものであることが明らかとなり、同省では平成15年度結果から正しく同じスペックで調査することとしている。
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