図に示したのは今後10年間に核兵器が再び使用されるおそれがあると回答した者の比率であるが、各国でそうしたおそれを抱く者が多くなっていることが分かる。

 技術進歩や核保有国の増加によってテロ組織が核兵器を入手し使用することが以前より容易になっていること、ウクライナ戦争で場合によっては核兵器使用を辞さないとロシアが表明していることなどが影響していよう。

 午前0時を人類滅亡の時刻に見立てた世界終末時計も今年1月には1秒減って残り1分29秒となり、1947年の公表開始後、最も短くなった。

 核兵器使用のおそれをもっとも多く抱いているのはロシア人の69.2%であるが、米国人も47.5%とロシアに次いで多くなっている。

 時事通信は、ピューリサーチセンター調査で広島・長崎への原爆投下を「正当化されない」と考える米国人が増えたことを報じる記事で以下のような米国人若者の事例を紹介している。

 カリフォルニア州バーバンクの高校生エディー・レシェは2023年に「核戦争のリスクに関する講演を聞き、怖くなったのがきっかけ」に学校で核廃絶運動をはじめ、当時の市長に核廃絶を目指す宣言を出させることに成功。これがきっかけで設立された学生団体が、全米12支部に広がり、参加者は高校・大学生ら約500人に膨らんだ。レシェ氏は「将来何をやりたいかを考えていた。しかし、核戦争が起きたら全てが失われると感じた」という(時事通信、2025年8月7日)。

 米国の連続テレビドラマでは、しばしば、テロリストによって米国内が核攻撃被害を受ける(受けそうになる)エピソードが描かれる(「24 -TWENTY FOUR-」、「マダム・セクレタリー」、「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」など)。

 映画でもキャスリン・ビグローが監督した2025年の「ハウス・オブ・ダイナマイト」では、突如、飛来した弾道ミサイルによる核攻撃を受け、シカゴが消滅する恐怖を描いていた。核ミサイルが飛んでくるとそれを打ち落とせる確率は半々などといったことを含め、いったいどんなことが起こるかということについての取材にもとづいてつくられた映画であり、その本当の恐怖が実際上は余り知られていないことを明らかにしている。そうした観点から、この恐怖を分かりやすく解説している町山智浩氏のネット動画が参考になる(ここ)。

 こうしたドラマや映画を見るにつけ、米国による原爆投下が今でも他国やテロリストから核攻撃を受けるかもしれないという悪夢を招いたと感じざるを得ないのである。

 こうした点を広島・長崎への原爆投下を「正当化されない」と考える米国人が増えている理由としてあげた記事をプレジデントオンラインに掲載しているので参照されたい(ここ)。

(2025年11月21日収録)


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