世界的に政治参加の方法の年齢差が広がっている。この点を示すOECDの調査結果(2021年実施)を掲げることとする。

 図は主要な政治参加の方法について、どういう方法を採ったかのOECD22か国の回答結果を年齢別に集計した結果である。方法は若年層(18〜29歳)の回答率の高い順に並べてある(注)

(注)各方法の英文は次の通り。国政選挙で投票(Voted in last national election)、署名活動(Signed a petition)、地方選挙で投票(Voted in last subnational election)、ソーシャル・メディアで政見を発信・散布(Posted or forwarded political content on social media)、政治的理由の不買運動(Boycotted products for political reasons)、政府のパブリックコメントに意見(Provided feedback on government documents)、政治家や官僚とのコンタクト(Contacted a politician or government official)、デモ参加(Took part in a public demonstration)、市民集会への参加(Participated a in citizen assembly or dialogue)。

 政治参加の方法としては、国政選挙での投票、署名活動、地方選挙での投票をあげる者が全体として多かったが、投票行動は高齢者ほど多く、署名活動は若者ほど多かった。そのため、高齢者では3位の署名活動が若者層では2位となっている。

 これら3つの主要な政治参加の方法より回答率が低いものの中でも、それぞれの方法で年齢傾斜が投票タイプと署名活動タイプに分かれている。

 各方法の年齢傾斜の状況をはっきりと見るため、若年層の回答率が高齢層の回答率をどの程度超過しているかの比率を図中の図として掲げた。

 デモ参加は若者の回答率が高齢層の回答率を40%上回っている。逆に、政治家や官僚とコンタクトは24%下回っていた。デモ参加やSNS(ソーシャルメディア)で発信・散布は大きく若者が上回っているのに対して、政治家や官僚とコンタクトのほか、国政選挙・地方選挙での投票、市民集会、パブコメといった手段では高齢層がかなり上回っていることが分かる。

 後者は在来型の政治参加の方法であり、有権者の数にモノを言わせたり、行政や政治と人的なつながりを活用できる高齢層が得意とする方法であるのに対して、前者は従来の方法ではどうしても高齢層に対して敵わないと感じている若者の切羽詰まってとる直接行動型ともいえる政治参加方法、あるいはSNSなど日頃身近なコミュケーション手段を活用した方法だと言えよう。

 こうした傾向がOECD諸国をはじめとする世界全体で広がっていることを示すデータを言ってよかろう。

 そして、こうした傾向が日本でも例外ではないことを最近示したのが東京都知事選である。

 2024年7月の東京都知事選は、現職の小池百合子候補が270万票以上を獲得し、新人の前安芸高田市長石丸伸二候補、立憲民主党の蓮舫候補らを破って3選を果たした。当初は小池、蓮舫の“一騎打ち”とみられていた都知事選だが、ふたを開けてみれば石丸旋風が吹き荒れ、SNSに強い石丸を30代以下が支持した結果である。

 この点をよくあらわしているのが下図のようなNHKの出口調査の結果である。小池候補、蓮舫候補が高齢層ほど支持が高かったのに対して、石丸候補は若い層ほど支持が多く、30代以下ではトップに立っていた。


 評論家の三浦瑠麗氏は「都知事選、若年層の行動が理解できないという人が多いようですが、今回の都知事選はどの媒体(テレビ、新聞、X、インスタ、Facebook、YouTube、TikTokその他)の情報に触れているかによって投票行動が変わった重要な選挙です」と分析、「テレビ視聴層に強いのは圧倒的に小池百合子氏。蓮舫氏はテレビ視聴の影響もありますが、snsではエコーチェンバー効果が起きて内輪のつながりの輪を広げることができず」と述べた(スポニチ・アネックス、2024.7.8)。

(2024年7月8日収録)


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