貿易や投資、労働やツーリズム、あるいは移民の世界的な流動、すなわちグローバリゼーションが進んでいるも同じ理由である。最近では、ウイルス感染も瞬時に世界化する。コロナのパンデミックが中国の武漢から世界に、デルタ株がインドから世界にまたたくまに広がる。 ここでは、輸送コストの推移を「海運コスト」と「航空運賃」の動きによって、また通信コストの推移を国際電話の「電話代」と今や通信(コミュニケーション)に不可欠なコンピュータの「記憶容量コスト」の動きによって示した図を掲載した。 輸送・通信コスト低減の一番手は海運コストである。 海運コスト(港湾と海上輸送の1トン当たりのコスト)は1920〜30年に4割減、そして1940〜60年に半減以下となっている。かつて工業地帯と言えば、石炭と鉄鉱石の鉱山の両方から遠くない場所に形成された。今では、海外から石炭と鉄鉱石を輸入する臨海部にも立地するようになった。日本の臨海工業地帯が良い例である。日本の高度成長は海運コストの低減によって可能となったといってもよいだろう。この点は戦後の重化学工業の発達について輸出品目の変化から追った図録4750にもふれた。 貿易の拡大には海運コストの低下が大きく影響しただろう。一方、投資や労働力移動、観光、感染などの地球規模の拡大には、情報通信コストや航空運賃の低減が大きく影響し、合わせて、戦後から最近に至るまで世界を変容させているグローバリゼーションの動きを、冷戦の終了といった制度面の変化とともにプッシュし続けている。 (2021年9月2日更新)
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