2005年末、医療制度改革と定率減税の廃止を含む2006年度税制改正が議論されている中で、にわかにたばこ税の議論がなされている。高齢化に伴う医療費負担の増大を、国民が直接負う保険料負担と患者負担、あるいは財政負担、医療供給側負担のいずれかで何とかしなくてはならないときに、いずれの負担にもならず、全体として負担を軽減する手段として浮上しているものである。その際、まず、気がつくのが日本のたばこ価格の安さである。

 図には、世界26カ国(具体的にはノルウェー、英国、アイルランド、米国、オーストラリア、シンガポール、香港、ニュージーランド、カナダ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、オーストリア、日本、ルクセンブルグ、イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、韓国、タイ、ブラジル、フィリピン、インドネシア)のたばこの価格を掲げた。資料は厚生労働省のHPである。

 欧米の中には500円を越える国がかなりある中で日本は273円と低価格となっている。たばこ税率の低さもその一因である(図録5150参照)。

 飯野靖四慶応大学教授によると、900万人の人口のスウェーデン、国民の意見は付和雷同のところがある。社会主義的な国柄で国民自らは余り貯金などしていないため、国家財政が左前になると国民も生活の危機を感じる。このため、従前、たばこは健康に良くないとして高率たばこ税を良しとしていたのに、600円のたばこじゃ売れなくなって税収が落ちたため、税収を上げるためにまた税率を低くした。そのため消費が増え、皆でたばこを吸っている。理屈がふるっている。文明度が高くなり、ストレスが多い社会になったのでたばこは精神の健康を維持するために不可欠と大学教授を初めインテリまで含め皆がそう言っているそうだ。

 日本のたばこ税議論だが、まず、たばこ税を1割高くしても消費が1割以上減ったら税収全体は増えない。たばこ消費減による肉体的健康の向上が全体としての医療費削減に必ずしもストレートにつながらない。スウェーデンの例が本当だとしたらこうした点が懸念される。

(2005年11月27日収録、2008年3月7日原資料拡充を受けノルウェー、インドネシアのデータ追加)


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