報告書では、自然災害の受けやすさを2つに分けて考えている。 まず、単純に自然災害に遭いやすい国かどうかであり(被災可能性)、毎年、地震、洪水などが襲われる可能性のある人数の総人口比であらわしている(第1の地図)。 次に、同じ自然災害に襲われても死者数が多い国もあれば少ない国もあることから分かるとおり、自然災害のダメージを受けやすいかどうか(自然災害リスク)はまたことなった指標として算出されている(第2の地図)。 被災可能性や自然災害リスクは東南アジア、アフリカ、中南米で高い国が多いことがうかがわれる。 自然災害リスクは、被災可能性の指標に災害に対する脆弱性の指標を掛け合わせて計算されている。具体的な計算法は図の(注)に記した通りである。
計算の元になった国際的自然災害データベース(CRED EM-DAT 2011)がどの程度までの災害をカウントしているかについては、上を参照。その他に温暖化のよる海面上昇の影響も災害の1つとしており、過去の実績に将来の推計が足し合わされている点にも注意が必要である。なお、計算上は、海面上昇を除く自然災害では、地震、嵐、洪水、干ばつの4災害を取り上げているが、これは、これら4災害で被災死亡者数の88%と大部分を占め、また火山の噴火、地すべり、森林火災といったその他の自然災害については適切なデータが得られないためとされている。 日本を例に取ると、「被災可能性」は、39.57%と計算されている。これに「災害に対する脆弱性」が28.13%であり、両者を掛けた11.13%が「自然災害リスク」となっている。国民1人が毎年自然災害に遭う可能性が約4割とはかなり高い数字であるが、台風や地震に遭う確率の高さや海抜1メートル以下の人口の多さ、あるいは被災の重複計上もありうるとすれば、まるきり空想的とも言えないであろう。被災した場合、実際にダメージを受ける確率が3割弱となっており、自然災害リスクは1割強と計算されている訳である。 数字そのものの説得力より、同じ計算で各国を比較した点に意義を認めることもできよう。 下表の通り、日本は自然災害に遭いやすい国としては世界第5位、自然災害のダメージを受けやすい国としては世界第35位となっている。被災可能性では、日本が「災害列島」である点が浮き彫りになっている。 主要国の指標をまとめた下図を見れば、日本が主要先進国の中で図抜けて自然災害に見舞われやすいことが明かである。被災可能性は第2位のイタリアの2.8倍である。災害に対する脆弱性では、ドイツ、カナダ、スウェーデンなどと並んで値が非常に低い(災害ダメージを受けにくい)ので、自然災害リスクは第2位の中国の1.8倍と差は大きく縮まるが、なお、図の主要国の中では最高である。国際会議であなたの国とは異なって日本は災害の多い国ですので〜という発言は、説得力をもつのである。原発は他国にまかせて日本は原子力発電から離脱するといっても非難は浴びないであろう。
(2012年1月19日収録)
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