紅茶をおいしく飲むには軟水がよいと言われる。硬水で淹れた紅茶は色や味が変わってしまうが、その原因は、水の中のカルシウムの量に関係している。すなわち、紅茶のうまみ成分である「タンニン」はカルシウムと結びつくと別の物質になり、色が暗くなって苦みが増してしまうからである。

 ここでは、全国の水道水の硬度についてのマップを掲げた。図の出典資料によれば全国水道水の硬度分布については、以下のように述べられている。

「蛇口からでる水道水に含まれるミネラルなどの無機成分を、東京大学のグループが2019〜24年に47都道府県1564地点で測定した。日本の水は世界保健機関(WHO)でミネラル分の少ない軟水に分類されるが、関東地方でカルシウム(Ca)やナトリウム(Na)など7つの主要無機成分の濃度が高めとなるなど各地で異なることが分かった。

 主要無機成分の濃度が千葉県で特に高い理由として、水道水の取水源となる利根川が関係しており、堀特任助教は「いろいろな地質に触れ、人が住んでいる場所を長い時間かけて流れてきた最下流で取水しているからではないか」と話す」。

 水の硬度とは、水質を表す指標のひとつであり、水に含まれるカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の 濃度を炭酸カルシウムの濃度で換算したものである。単位は mg/L。 Ca と Mg の濃度が高いと硬い水(硬水)、濃度が低いと軟らかい水(軟水)となる。世界保健機関 (WHO)の分類では、

 軟水:60 mg/L 以下
 中硬水:60〜120 mg/L
 硬水:120〜180 mg/L
 超硬水:180 mg/L 以上

としている。WHO では基準値は設けられていないが、日本の水道水質基準 では、300 mg/L 以下と設定されており、水質管理目標設定項目として、おいしさ(味)に関する指 標から 10〜100 mg/L と設定されている。

 ヨーロッパなどでは硬水が多くて、日本では軟水が多い理由は大地のでき方と地層の特徴のちがいによるものと考えられる。

 水の中のミネラルは、雨水や雪どけ水が大地にしみこんで川となり、周りの地層などの成分が少しずつ溶けこんだものである。地域ごとに大地をつくっている物質がちがうことや、地形のちがいによって陸地に水がとどまっている時間がちがうことから、地域によって硬度に差が出る。

 日本は山と海が近く、傾斜が急な地形である。そのため川の角度は急で長さが短く、岩石とふれる時間が短いから、ミネラルの少ない軟水になる。 また火山活動によってできた場所が多く、地層はおもにミネラルの量が少ない火成岩でできていることも理由と考えられている。

 それに対してヨーロッパなど硬水が多い地域では、山と海が遠く離れていて、水は緩やかな地形をゆっくり移動するよ。岩石とふれる時間が長いからミネラルがとけだしやすく、硬水になる。 また、ヨーロッパの地層には、ミネラルを多く含んだ貝がらや魚の骨がはいった石灰岩の地層が広がっていることも原因だ。

 auコマース&ライフ株式会社が運営する「Wow! magazine」サイトなどによると、市販のミネラルウォーターの硬度は以下である(該当ページ)。
SUNTORY 天然水 南アルプス
硬度はおよそ30mg/l
日本の天然水 い・ろ・は・す
<産地別硬度>
・清田(北海道):31.8mg/l
・奥羽山脈(岩手県):31mg/l
・砺波(富山県):27.7mg/l
・白州(山梨県):36.1mg/l
・大山(鳥取県):40.3mg/l
・阿蘇(熊本県):71.1mg/l
・えびの(宮崎県):32.3mg/l
クリスタルガイザー(カリフォルニア北部)
外国産ながら硬度は38mg/lと低め
ボルヴィック(フランス)
60mg/l
エビアン(18世紀から現在まで、200年以上も世界中で愛されてきたフランス産ナチュラルミネラルウォーター)
硬度304mg/l
コントレックス(世界中で愛飲されているフランス産ナチュラルミネラルウォーター)
硬度はおよそ1,468mg/lと非常に高い
クールマイヨール(アルプス山脈モンブランが源泉)
硬度は1,612mg/lと非常に高い

(2024年8月7日収録)


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