生物の種類の多様化が絶滅を乗り越えて進んできた状況を図録化した。

 生物の分類は、大きい順に、門−綱−目−科−属−種に階級分けされる。場合によっては各階級の前後にさらに分類が大別ないし細分される。例をもって示すと、

界−動物界
門−節足動物門
綱−昆虫綱
亜目−多食亜目
目−甲虫目
科−コガネムシ科
亜科−カブトムシ亜科
属−カブトムシ属
種−カブトムシ

 末尾に参考として「目」と「科」の例を一覧表で示したが、「目」はタコ、クモ、トンボ、甲虫、カメ、クジラといった基本デザインを指し、「科」はマダコ、ジグモ、オニヤンマ、コガネムシ、スッポン、マッコウクジラといった応用デザインを指す。

 図の左側に海生動物の目の数と科の数の推移を示した。

 基本デザインである「目」は4億数千年前の古生代オルドビス紀までに「エディアカラ動物群」「カンブリア紀の爆発」を通じて大方が出揃ったのち、さらに中生代ジュラ紀、白亜紀でさらにやや増加している。

 応用デザインである「科」も同様であるが、中生代ジュラ紀、白亜紀、新生代第三紀でさらにかなり増加している点が異なっている。

 さらにこうした生物の体制の多様化は、数回の絶滅時期を乗り越えて進んできている。

 過去、5回の大きな絶滅が起こっており、この時期には、目や科は減少した。しかし、減少は一時期に止まり、欠けた生物の生息環境を新しい生物がすぐ埋める形で生命は進化したことがうかがえる。

5大絶滅の特徴
オルドビス紀 ・腕足類、頭索動物、筆石類の半数の属が絶滅
デボン紀 ・陸上生物、ことに植物への影響少ない
・礁への影響大(カイメン類(層孔虫)の絶滅)
・板皮類の絶滅
ペルム紀 ・化石の歴史上最大の絶滅(海生動物の種の95%、科の半分)
・三葉虫、迷歯類、初期爬虫類の絶滅
・かなりの目(8)の昆虫が絶滅したのはこのときだけ
・魚類がおおむね生き残った理由はナゾ
三畳紀 ・多くの四肢類の絶滅
・恐竜以外から恐竜への移行
・多くのアンモナイト、海ユリ、ウニ、造礁生物の絶滅
白亜紀
〜第三紀
・恐竜(鳥盤目、竜盤目)の絶滅
・アンモナイト、首長竜、翼竜、魚竜の絶滅
・哺乳類の35%の種の絶滅
・落葉性以外の植物の多くが絶滅
(注)5回の絶滅は「すべて、環境の著しい変化(小惑星、彗星、巨大な火山活動、氷河形成、海面水準の変動)によって引き起こされた。」
(資料)リチャード・サウスウッド「生命進化の物語 」原著2001

 右側に示準化石として有名なアンモナイトの種類の変遷を出現から絶滅まで追った図を掲げた(平野弘道「恐龍はなぜ滅んだか (講談社現代新書) 」1988年)。ここで示準化石とは、それが見つかることで、その地層がある特定の地質時代であることが判断できる地域的に広く分布していた化石を指す。非常に印象的なのは、生物一般を襲った3回の絶滅時期に、アンモナイトについていも、やはり多くの種類が絶滅したが、そのうち1種類が生き残って、そこから多種が進化していった状況である。そして、最後には、恐竜が絶滅した白亜紀から第三紀にかけてついに全体が絶滅するに至っている。

 このように絶滅をくぐり抜けて進んできた生物進化の果てに我々人類が存在していることを知ることは大事なことだと思う。

(参考)
「目」と「科」の例
コウイカ(イカ1) コウイカ、ヒメイカ
ツツイカ(イカ2) ヤリイカ(アオリイカを含む)、ダイオウイカ、アカイカ(スルメイカを含む)
タコ マダコ(イイダコ、ミズダコを含む)
クモ ジグモ、ハグモ、ヒメグモ、カニグモ
サソリ コガネサソリ、ヤエヤマサソリ、キョクトウサソリ、マダラサソリ
ダニ コナダニ、ホコリダニ
カゲロウ モンカゲロウ、ヒラタカゲロウ
脈翅類 クサカゲロウ、ウスバカゲロウ
直翅類 バッタ、オンブバッタ、コオロギ、スズムシ、マツムシ
トンボ イトトンボ、カワトンボ、オニヤンマ、トンボ、ムカシトンボ
ゴキブリ チャバネゴキブリ、ゴキブリ
甲虫 オサムシ、ゲンゴロウ、ミズスマシ、クワガタムシ、コガネムシ(カブトムシを含む)、タマムシ、テントウムシ、カミキリムシ、ハムシ
鱗翅類(チョウ、ガ) アゲハチョウ、シロチョウ、タテハチョウ、シジミチョウ、コバネガ、コウモリガ、ホリガ、ミノガ、スガ
ネズミザメ(サメ1) ウバザメ、ジンベイザメ
ツノザメ(サメ2) ツノザメ、カスザメ
ネコザメ(サメ3) ネコザメ
カグラザメ(サメ4) カグラザメ、ラブカ
エイ ノコギリエイ、アカエイ、トビエイ、イトマキエイ
ニシン ニシン(マイワシを含む)、ウルメイワシ、カタクチイワシ
スズキ スズキ、タイ、サバ(マグロ、カツオを含む)、アジ(ブリを含む)、タチウオ、イカナゴ
ウナギ ウナギ、ハモ
コイ コイ
サケ サケ
タラ タラ
ダツ サンマ、ダツ
メダカ メダカ
キンメダイ キンメダイ
カサゴ クサカサゴ、ホッケ
カレイ カレイ、ヒラメ、ダルマガレイ
フグ フグ、イトマキフグ、ハコブグ、ハリセンボン
サンショウウオ(有尾類) サンショウウオ、トラフサンショウウオ、アメリカサンショウウオ
カエル(無尾類) ヒキガエル、アマガエル、アオガエル、アカガエル
カメ リクガメ、スッポン、ウミガメ、ヌマガメ
ワニ アリゲーター、クロコダイル
有鱗類(トカゲ、ヘビ) トカゲ、イグアナ、ヤモリ、カメレオン、メクラヘビ、ナミヘビ、コブラ、クサリヘビ
食虫類 トガリネズミ、モグラ、テンレック
コウモリ オオコウモリ、オヒキコウモリ、ヒナコウモリ、ヘラコウモリ
食肉類 クマ、パンダ、アライグマ、イタチ、ハイエナ、イヌ、ネコ(ライオン等を含む)
齧歯類 ネズミ、ビーバー、トビウサギ、アシネズミ
ウサギ ウサギ、ナキウサギ
偶蹄類 イノシシ、カバ、ラクダ、シカ、キリン、ウシ
奇蹄類 バク、サイ、ウマ
クジラ ナガスクジラ、マッコウクジラ、マイルカ、ネズミイルカ
霊長類 ツパイ、メガネザル、キツネザル、オマキザル、ショウジョウ、ヒト
(資料)平凡社大百科事典

(2007年3月28日収録)


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