国の原子力事故の防災指針で新たに設定される原発5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)では、重大事故が起きた場合、住民がただちに避難を開始することとなる。このほどこの原発5キロ圏の推計人口が判明したのでグラフに示した。「専門家は住民が一斉に避難する際に交通渋滞や移動手段の不足が生じ、混乱する可能性があると指摘する。」(毎日新聞2012.2.10)

 原発5キロ圏人口が最も多いのは、住宅街に近接する日本原子力発電東海第二原発(茨城)の4万8千人であり、これに静岡の中部電力浜岡原発の1万6千人が続いている。1万人以上の原発が5つにのぼる。逆に人口が最も少ないのは福井県の敦賀原発であり373人となっている。

 東日本大震災にともなって極めて深刻な原子力事故を起こした福島第一原発の半径5キロ圏の人口は1万3千人と国内の原発の中で5番目と多い方だったことが分かる。

 原発の地元自治体は新指針に沿った地域防災計画を9月末までに作成するよう求められているが、避難路としての道路整備、バスなどの移動手段確保、官民の信頼関係など課題解決には困難が予想される。

予防防護措置区域(PAZ)とは

 原子力事故の新たな防災指針で原発から半径5キロ圏を目安に設定される区域。炉心溶融などの重大な原発事故が起きた場合、放射性物質の大量放出前に圏内の住民を優先的に避難させなければならない。半径30キロの緊急防護措置区域(UPZ)内では、放射線量の実測値が基準値を超えた地区の住民が順次避難を開始する。PAZ圏内にとどまった場合の全身被ばく線量は、確実に健康被害が出る1日1シーベルトに達する恐れがあるとされる。PAZとUPZを設定する防災対策は欧米の原発立地国の多くで採用されている(毎日新聞同上による)。

 図で取り上げた17の原子力発電所は次の通り。泊(北海道)、東通(青森)、女川(宮城)、福島第一(福島)、福島第二(福島)、東海第二(茨城)、浜岡(静岡)、柏崎刈羽(新潟)、志賀(石川)、敦賀(福井)、美浜(福井)、高浜(福井)、大飯(福井)、島根(島根)、伊方(愛媛)、玄海(佐賀)、川内(鹿児島)。

(2012年2月20日収録)


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