先進国(OECD)では、一時期、さかんだった原子炉の建設が米国とソ連における大きな原発事故の影響もあって1980年代以降大きく減少し、21世紀にはいるとOECD諸国に代わって中国などの非OECD諸国で原子炉の建設がさかんになりつつあったことが明らかである。1980年代以前の非OECDの原子炉着工はソ連のものである。 OECD Observer誌(2011年第3四半期版)は、IEA, World Energy Outlook 2011からこの図を引用しながら以下のように述べている。
米国もスリーマイル島原発事故以降30年にわたって原発の新規建設は許可しないで来た。原発事故の影響は大きいのである。
脱原発に対する経済界の反対論は、エネルギー供給の不安定化や電気料金の上昇による産業競争力の阻害を論拠としている。図をみると今後の長期的展望では経済界のいうことが正しいとしても先進国との競争というよりは途上国、新興国との競争が問題となっていると考えられよう。福島事故に対して先進国の方が途上国より敏感に反応すると考えればなおさらそうであろう。 経済界の議論は、原子力発電の方が安定的でありかつ効率がよいという必ずしも実証されていない前提に立っているばかりでなく、世界各国は各国が原子力発電に乗り出した時期の意欲のまま原子力発電を続けることを前提としており、原発事故の世界中の人々への精神的影響を踏まえた現実的な将来展望について正直に議論していないと思われる。 (2012年9月20日収録)
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