メンタルヘルス患者数の国際比較は図録2141に掲げたが、関連して、精神病床や精神科医の国際比較情報がOECDの報告書に掲載されているので、ここで引いておく。

 日本の精神病床数は人口当たり世界一となっている。図録2141によると日本のメンタルヘルス患者数はそれほど多いわけではないので、病床稼働率が非常に低いことになる。

 このデータは、日本が精神病対策としてノーマライゼーションの対極に位置づけられる隔離型の古いパターンを保持している象徴のようにも見えるが果たしてそうなのだろうか。

 実際、入院の半数弱は医療保護入院制度によるものだとされている(末尾東京新聞社説参照)。精神保健法改正に向けた検討会では制度の全廃が検討されたが、病院団体の反対で入院の信頼性の向上へと改正の主眼が転換したらしい。

 2000年と2018年前後を比較すると、日本を含め、多くの国で精神病床は減少傾向にあるようだ。患者数が減っているというより、通院や在宅の治療にシフトしているからであろうか。あるいは空きベッドを減らすような合理化対策が取られているのであろうか。これも詳細は不明である。

 次に、人口当たりの精神科医師数を比較すると、日本は、精神病床の多さとは対照的に精神科医の人数は少なくなっている。

 こちらの方の時系列変化は、病床数とは異なって、減少傾向というより、メンタルケア・ニーズの拡大によるものなのか、あるいは治療薬の発達に沿った投薬管理者ニーズの拡大によるものなのか、むしろ増加している国が多い。

 こうしたデータは、各国でメンタルヘルスの制度が異なり、統一基準のデータ収集は困難であり、また、各国でデータのとり方が異なっているといると思われるので、あくまで参考にしかならないかもしれない。


 ここで図のデータの国名を掲げておくと、精神病床の方の図の順番に、メキシコ、トルコ、イタリア、チリ、米国、ニュージーランド、アイルランド、英国、カナダ、アイスランド、スペイン、イスラエル、スウェーデン、オーストラリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、OECD平均、ギリシャ、ルクセンブルク、スロバキア、フランス、オランダ、ハンガリー、チェコ、スイス、リトアニア、ノルウェー、ラトビア、韓国、ドイツ、ベルギー、日本である。

(2021年7月18日収録、2022年10月28日東京新聞社説)


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