WHOの指針では、本人の意志が不明の場合、家族の書面による承諾で臓器提供が可能としているのに対し、日本の現行法では本人の書面による意思確認と家族の同意(家族がいる場合)が両方とも必要である。世界中でこれほど制約があるのは日本だけという。また、本人の意思確認が前提なので、提供は遺言可能年齢を元に15歳以上と定められており、子どもの臓器提供が不可能なため幼い子どもは国内移植が出来ず、渡航移植に頼ってきた。 脳死に対する考え方も海外と異なる。「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態」を「脳死」といい(脳幹の機能が残存する「植物状態」とは異なる)、長くとも数週間以内に心停止に至る脳死を死であると捉えている国も多いなか、日本人の感覚では心臓が止まらないと死ではない、とされている。現行法も、脳死状態で臓器提供を行えるかを臓器提供そのものと同様の規定でのみ可能としている。家族の遺体を傷つけたくないという思いも強く、臓器提供への理解が得られにくいのが現状である。 臓器移植には生きている家族からの臓器提供(生体移植)、死亡者からの臓器提供(死体移植)という2つの方法がある。死体移植には、脳死移植と心臓死移植とがある。 生体移植としては、腎臓、肝臓、肺、膵臓などがある。腎臓は誰でも2つ持ち、1つでも普通の生活に支障がないことから片方の腎臓を提供する。日本の移植例は世界の中でも最も多いといわれる。肝臓は部分的に切取り移植する。肝臓は再生作用が強く、手術後、支障のない大きさに戻る。世界には例が少ないが日本では多く行われている。肺は肝臓と違い再生しないため2人の人から少しづつ提供を受ける。例は少ない(NPO法人日本移植者協議会HPより)。 死体移植には心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、小腸などがあり、心臓以外は脳死以外でも不可能ではないが、かなりむずかしいとされる。 図には、Transplant Communication(臓器移植の情報サイト)のまとめ(2009.12.28更新)により、心臓、腎臓、肝臓、肺に関する生体移植及び死体移植の臓器移植数をグラフにした。 心臓と肺の臓器移植は事例が少ない。腎臓と肝臓は、生体移植が大部分であり、事例は増加傾向にある。脳死移植も若干ながら行われている。 こうした日本の臓器移植が、海外と比較して少ない点については図録2112参照。 (2009年5月7日収録、2012年3月18日更新)
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