乳児は1歳未満、乳幼児は5歳未満の生まれて間もない子どもを指す。乳児死亡率は出生児数に占める幼児死亡数の割合を指す統計用語であり、経済発展や厚生水準の主要指標として使用される場合が多い。

 乳幼児死亡率も同様に分子を乳幼児死亡数とする場合もあるが、他の年齢別死亡率と同じように分母を5歳未満の人口として計算する場合もある。

 ここでは、前者の乳幼児死亡率の19世紀からの長期推移を主要国について掲げた。対象としたのは、欧米先進国の代表としてフランスと英国、それに遅れて先進国入りした日本、シンガポール、韓国、そして今なお発展途上の中国、インドである。

 フランス、英国でも19世紀中ごろには、生まれた子どもの10人に3人ぐらいは5歳未満で亡くなっていた。日本は昭和初期頃はそんなものだったが、戦前には欧米先進国には及ばないもののかなり改善した。シンガポールも戦前は(注)、また韓国、中国、インドは戦後においても10人に3人ぐらいの水準から脱せていなかった。それが、いま述べた国の順番で経済発展が起こり、乳幼児死亡率は100人に数人レベルまで急速に低下し、各国とも、欧米先進国に近づいたのであった。

(注)英国植民地だったシンガポールはデータが1930年から存在している。シンガポールは日本軍占領下の1973〜1945年には各年それぞれ32%、46%、35%にまで乳幼児死亡率が上昇している。

 開発途上国への援助を行っている団体によると、現時点の乳幼児の主な死亡原因は、@出産時の合併症、A肺炎などの感染症、B下痢、Cマラリアとされる。

 これらは、先進国ではほとんど見られない、解決が可能な原因であり、清潔な水を飲む、石鹸での手洗いを行う、良好な栄養摂取と抗生物質の投与などによって、合併症、肺炎、下痢を防ぐことができる。また毎年85 万人もの乳幼児がマラリアによって死亡しているが、防虫蚊帳を使うこと、妊産婦への予防的治療、殺虫剤を使用をすることで、死亡率を下げることができる、とされる。

 グラフを見ると、各国が欧米先進国に追いついた時期も明らかとなる。

 日本は高度成長期中期、東京オリンピックの頃の1965年前後、シンガポールはリー=クアンユー政権下の1975年前後、韓国は金大中政権下の2000年前後に先進国入りしたと見られる。中国は数年後、インドはもう少し先と予想される。

 なお、日本やシンガポールは欧米先進国に追いついたのちしばらくして乳幼児死亡率では欧米先進国を抜き去っている点も目につく。

(2024年10月6日収録)


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