参照:インフルエンザ死亡数の長期推移(日本)

 中国武漢市から広がっている新型コロナウイルスの猛威が世界的な関心を集める中、米国ではインフルエンザの流行が深刻化している。米疫病対策センター(CDC)の推計では、19年10月以降の今シーズンで2月1日までに死者は1万2千人に達したとされている。「米国ではインフルエンザが原因で毎年少なくとも1万2千人以上が死亡。とりわけ感染が深刻だった17〜18年のシーズンには患者数は4500万人に上り、6万1千人が死亡した」(産経新聞、2020年2月8日)。今期はさらにこれを上回る可能性があるという。

 日本のインフルエンザ死亡数の長期推移は図録1955で示したが、ここでは、OECDのデータベースから1990年以降の主要国のインフルエンザ死亡数の推移を掲げた。

 日本の値が図録1955と一致していることからも理解されるように、このデータは国際基準に沿った死亡診断書ベースの死因統計による結果であり、インフルエンザが直接の死因であるケースしかカウントされていないと考えられる。死因統計のまとめの遅さのため、肝心の直近データが得られず、また暦年ベースの集計で流行シーズン・ベースの集計ではない。ただし、定義が揃えにくい各国検疫当局の発表より相互比較の信頼性は高いのではないかと思われる。

 上記の米国CDCの推計は、インフルエンザから肺炎に移行して死亡したケースなど関連死を含む推計値なので、図のデータとの比較には注意を要する。以下に、参考のため、米国CDCの原データを掲げておく。


 冒頭の図のデータで見ても米国のインフルエンザ死亡数はやや突出してきている感がある。2000年代の前半までは人口規模の割に米国のインフルエンザ死亡数は多くなく、しかも、他国の流行とほぼ連動していた。例えば、各国とも2001年は少なく、2003年や2005年は多くなっている。ところが、2008年や最近年は米国のインフルエンザ死亡数だけが特に多くなる傾向が認められる。

 米国だけでなく、日本やカナダ、フランスなども、米国型に近づいているようにも見えるので注意が必要だろう。

 主要国だけでない各国のインフルエンザ禍の程度を見るため、OECD諸国及び協力国におけるインフルエンザ死亡率の比較図を下に掲げた。

 カナダ、スウェーデン、ノルウェーといった寒冷国でのインフルエンザ死亡率が高いことがうかがわれる。また、10年程度前と比較してインフルエンザ死亡率が上昇している国が多いことも分かる。


 取り上げている主要国は日本、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、米国、英国の7カ国である。国際比較図の国は、図の順番にオーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、ロシア、南アフリカである。

(2020年2月12日収録、2月14日インフルエンザ死亡率の国際比較図、2月15日起点を2000年から1990年に変更、米国CDC推計値も)


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