しかし、近年、地方の自治体病院などの医師不足による地域医療の危機が問題となり、地方大学の医学部卒業医師の数の増加とともに、地元就業率の向上が課題となっている。 各地方の大学医学部の卒業生は、必ずしもその地方の医師となるとは限らない。ここでは、毎日新聞の調査結果から、2010年春の医師国家試験合格者の地元残留率(出身大学の付属病院か大学がある都道府県内の病院で研修を受けている割合)をグラフにした。 最も高い地元残留率は順天堂大の90.3%、第2位は名古屋大の88.1%であった。最低は宮崎大の19.1%、次ぎに低いのは、金沢医科大の23.2%であった。 地元残留率は、東京、大阪、愛知の大都市圏では平均7割以上と高いが、それ以外の地方圏では、概して低くなっている。 地元高校出身率と地元残留率の相関図(下図)を描くと、両者には正の相関があることが分かる。 大都市圏では、地元出身者が多く、その分、地元残留率も高くなっている。地方の大学医学部では、都会など他地域からの入学者が多く、その分、地元残留率も低くなっている様子がうかがえる。地方圏でも札幌医科大のように地元高校出身者が多く、その分、地元残留率が高い場合もある。
地元高校出身率が高ければ地元残留率が高いという一般傾向があるとはいえ、、各大学ともに、地元高校出身率よりは地元残留率の方が概して高くなっている(45°線より上にある)。すなわち地元高校出身者で他県に転出してしまう医師より、他県から入学した医学部生で地元に残る卒業生の方が多いのである。つまり、地元に医学部がある効果が無いわけではないことが分かる。 どれだけ地元高校出身率より地元残留率が高いかで地方の大学医学部の医師数増加効果がだいたい測れるであろう。これを地元残留効果と呼ぶことにしよう。大都市圏以外の地方圏だと徳島大が地元高校出身率を地元残留率が40.6%ポイント上回っており、地元残留効果が高い。逆に鹿児島大では同じ引き算の結果がゼロと地元残留効果が低くなっている。 医師国家試験合格者(2010年春)が地元や大学病院に残る割合 と地元の高校出身者の割合(%)
(資料)毎日新聞2010年8月2日 (2010年8月5日収録、6日コメント修正)
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