アンケート調査で子供が少ない理由を聞くと教育費の高さを答える親が多い。また、韓国など儒教圏の合計特殊出生率の低さの理由として、私的教育費の高さが指摘される。

 そこで家計支出としての教育費の高さと合計特殊出生率との相関を都道府県データで検証してみた。教育費は、子供1人にかかる教育費の高さを見るため、全国消費実態調査から、世帯の平均教育費支出を、幼稚園から大学、専門学校まで含めた学校に通っている平均世帯員数で割った値を採用した。かなり密接なマイナスの相関関係があることがうかがえる。別の要因が教育費の高さと合計特殊出生率の低さをともにもたらしている場合も同じような相関関係が生じるので、これだけで因果関係を証明したことにはならないが、それを疑ってみる価値はありそうである。

 少子化の理由としては、高学歴化、晩婚化や女性就業率の上昇が指摘されることが多いが、むしろ、

      教育費が高い
      ↓
  子供数の減少
  (出生率の低下)
      ↓ 



晩婚化・女性就業率の上昇

という因果関係が成立しているのではなかろうか。

 第1に、教育費が高いので沢山の子供は育てられない。従って、慌てて結婚し、出産を開始する必要がない。まずは働こう、という因果の連関。

 第2に、教育費が高いので、給料が安い若いうちに子供を育てるのは無理。キャリアをつみ給料が高くなってから結婚、子育てをしよう、という因果の連関。

 図は都道府県ごとの状況を示しており、興味深い。

 教育費が最も高い(教育にもっともお金をかけている)のは、想像されるように東京である。その他、神奈川、千葉、埼玉など首都圏の県も教育費が高い。

 関西圏も首都圏に次いで教育費が高いが、特に、奈良が全国2位であるのが目立っている。

 反対に教育費が安いのは沖縄のほか、鹿児島、大分などの九州、島根、鳥取といった山陰、そして福島、青森など東北である。

 出生率との関係では、北海道は教育費が安いのに出生率は低い。東京、京都、宮城、秋田なども教育費のレベル以上に出生率は低い。

 沖縄は逆に教育費が安い以上に出生率が高い。宮崎、熊本や滋賀なども教育費の割に出生率が高い。

(2004年9月13日収録、2016年1月15日更新)


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