別居率の統計データは統計の充実した我が国でも単身赴任を含む別居率しか得られない。ましてや同一の基準で夫婦の同居・別居の各国比較は不可能と思っていた。ところが、代表的な国際意識調査であるISSP調査では、2015年に、回答者の配偶関係を調べる設問の中で、有配偶者を同居と別居(単身赴任を除く)に分けてきいているので別居率が分かることになった。 上に世界37カ国のデータを掲げたが、日本は0.3%で世界最低である。 夫婦の別居は、夫婦関係がひどく悪化した場合に、離婚に至ることもある一ステップとして発生するが、離婚が禁じられている国では、そのまま定常状態化することも多い。 カソリック国のチリやベネズエラで別居率が1割以上と非常に高いのは、宗教上離婚が原則禁じられているからであろう。英国や米国で別居率が6〜7%と高いのは、高い離婚率と平行した現象である。フランスの別居率の高さは両方の要因が考えられる。 各国で、別居が離婚に至るステップの側面が強いのか、それとも離婚できないための定常状態の側面が強いのかを見るため、離婚者率と夫婦別居比率をXY軸にとった散布図を描いた(下図参照)。 ここで、離婚者率は、離婚を経験してるが再婚はしていない者が人口に占める割合であり、いわゆる離婚率とは異なる。離婚率が高くても、再婚率も高い場合は離婚者率はそれほど高くないということがありえよう。しかし、一般的には、離婚者率はその国で離婚が多いかどうかの指標にはなっているだろう。 米国のように離婚者率も夫婦別居比率も高い国は、別居のステップを踏んだ後に離婚に至る場合が多いことを示している。 ハンガリーのように離婚者率は高いが夫婦別居率がそれほど高くない国は、別居を経ずにいきなり離婚に至る場合が多いことを示している。 チリやベネズエラや南アフリカのように離婚者率が低いのに夫婦別居比率が高い国は、離婚はせずに別居を続ける夫婦が多いことを示している。チリやベネズエラの場合は離婚を禁じているカソリックの影響が強いと考えることができよう。 日本は離婚者率も夫婦別居率も低い方であるが、上述の通り夫婦別居率は世界最低であるが、離婚者率はそんなに低いわけでもない。 (2018年1月29日収録)
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