世界的には、1980年から2009年にかけて、女性の労働力率は50.2%から51.8%に上昇し、他方、男は82.0%から77.7%と低下しているので、男女の労働力率ギャップは縮小している(World Bank, World Development Report 2012による。以下同様)。 過去25年にわたる世界的な労働力率の上昇傾向は、世銀の報告書によれば、経済発展と教育水準の上昇、そして出生率の低下が合わさった影響により、女性の働くチャンスが増えているためである(特に衣服や雑貨などの輸出型産業が成長し女性の労働機会が拡大するケースが多い)。 また、経済発展にともなって電気、水道、道路、運輸などのインフラが発達すると女性が家庭外で働きたくとも働けない生活時間の制約や労働上の制約を取り払われ、女性の労働力率の上昇につながると考えられる。 しかし、地域別、国別の女性の労働力率についてはかなりの差がある。緑系の色の国では50%未満であり、オレンジ・赤系の色の国では50%を越えている。 地域別に女性の労働力率が低いのは、中東・北アフリカ の26%、南アジアの35%であり、同じ値の高い東アジア・太平洋の64%、サハラ以南アフリカの61%と比較して25%〜40%ポイントの大きな差がある。もっとも、労働力率の低かったラテンアメリカ、中東北アフリカは大きく上昇、高かったヨーロッパ、中央アジア、東アジア・太平洋はやや低下したため、地域別の差は縮まっているという。 中東・北アフリカの値が低いのは、イスラム諸国が多いからである。サハラ以南アフリカでもイスラムの影響が強い国では値が低く、女性の労働力率が7割を越える場合も多い非イスラム国との対比が著しい(イスラム人口比率は図録9034参照)。インドも低く、同じ人口大国の中国が高いのと対照的である。 東南アジアは半島部と島嶼部とに分かれるが、女性労働力率が70%超と高い半島部と、低い島嶼部とが対照的である。もっともイスラム国のマレーシアは半島部であるが労働力率は低くなっている。 ヨーロッパの中では北欧とドイツ・中欧の女性労働力率が高いのが目立っている。ラテンアメリカは概して高くないが、特に中米では低くなっている。 中央アジアから東アジアにかけては中国や旧ソ連国が高く、日本、韓国などはそう高くない。 こうした世界的な労働力率の違いは、最初にふれた女性労働を容易にする経済発展度の違いだけでは説明できず、むしろ、子ども、高齢者に対するケアや家事、外出についての男女の役割に関する社会規範が大きく影響していると言わざるを得ない。 (2012年9月15日収録)
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