外交に関する世論調査の結果から、今後の開発協力(2011年まで「経済協力」)のあり方についての意識の変化を見ると、この2000年代の前半までの10数年で、開発協力を「積極的に進めるべきだ」とする者は、40%近くから20%以下へと急激に減り、逆に、「なるべく少なくすべきだ」とする者が、10%以下から25%まで増加し、両者の比率は逆転してしまった。

 開発協力は、途上国の発展への援助や途上国における貧困の撲滅といった役割ばかりでなく、「情けはひとのためならず」の側面も大きいはずだが、長年の経済低迷や財政難から日本人に余裕がなくなり、こうした結果となったと一応は理解できるが、少し金回りが悪くなるとここまで他人には厳しくなるのかというような感慨も抱かざるを得ない。

 ところが、2006年以降、両者の比率は再度逆転し2008年〜11年には積極派がかなり回復し、消極派は減っている。久しぶりにこの設問が復活した2014年も同じ方向をたどっている。2016年1月には、積極派が1996年以来最多のレベルにまで増えている。バブル経済が崩壊して困っている他国を思いやる余裕がなくなっていたのが、経済の多少の回復で、そうした余裕が復活しているかのようである。

 途上国への手助けとしての経済援助でなく、国益の面でも、軍事力で勝負しない日本としては経済協力が最大ともいってよい外交ツールとなっている訳であるが、国際テロの問題や世界的な食糧・資源危機、あるいは中国によるアフリカやアジアなどへの途上国援助への対抗力として、この点が再度国民に理解されてきているのであろうか。

 日本以外の援助国の国民が国際援助についてどう考えているかを下図に示した。欧州諸国では多くの国民が国際援助額の増額について賛成が反対を上回っている。ただし、英国、ハンガリー、ギリシャでは賛成より反対が多い。なおハンガリーのみは途上国援助がODAと見なされるDAC(OECD開発援助委員会)に非加盟である。日本は賛成が反対の2倍以上なのでそういう意味からはスペイン、ドイツ並みに途上国援助に積極性を示しているといえる。


(2007年4月6日更新、2007年12月3日更新、2008年12月8日更新、2009年12月21日更新、2010年12月20日更新、2011年12月5日更新、2014年12月22日更新、2016年3月14日更新、6月24日欧州諸国との比較、2017年1月7日更新、12月26日更新、2018年12月23日更新)


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