調査結果を順位の変化で追ってみると、1976年以降、山崩れや洪水など災害の防止のための治山治水機能が、変わらず、1位であったが、2007年には地球温暖化防止が1位となったためこれに次ぐ第2位となった。2011年〜19年は、治山治水の比率が増えたわけではないが、地球温暖化防止の回答率が減ったため、1位に返り咲いたが2023年には再度2位となった。 1976年〜80年には第2位であった木材生産機能は、外材輸入の増加、木材価格の低落と平行して、順位を下げ続け、1999年には、最下位の9位となった。もっとも、2003年には8位、2011年には6位、2019年には5位と地位をかなり回復している。これは、間伐が増え、熱帯雨林の破壊、木質バイオマスの利用などに関心が集まり、また戦後直後に植林した森林の伐期が訪れることから各地で木材のブランド化、国産材使用の促進が図られつつある状況を反映していると考えられる。もっとも下表(注)のように選択肢の表現がより具体的になった影響で比率の上昇が大きくなった可能性もある。もっとも2023年には再度7位に低下した。 森林の機能として、近年、大きくクローズアップされているのが、地球温暖化防止の機能であり、1999年に、いきなり第3位となり、2003年には第2位となり、2007年には第1位となった。これは、1997年に気候変動枠組み条約にもとづく第3回締約国会議(COP3)で「京都議定書」が採択された影響が大きい(2005年には発効)。これによれば、日本は2012年までに1990年比6%のCO2削減を約束しており、日本のCO2削減目標達成計画の中では、各種の削減対策の中で、森林吸収源対策で3.9%減が大きな要素として組み込まれている。森林は管理された施業を前提にCO2を吸収する役割があるとされ、また、バイオエタノールなどバイオマス燃料が化石燃料と代替されれば、それだけ、大気中に放出されるCO2は減少する点に、国民の関心も集まりつつあるのである。もっとも東日本大震災がおこった2011年調査では54.2%から45.3%へと回答が減り、2019年調査でも42.3%へと更に低下しており、この点に関する関心が相対的にやや低下したと見られる。もっとも2023年には再度1位に返り咲いた 治山治水と重なるところもあるが水資源の涵養、いわゆる緑のダムの機能についても、長く第2であり、地球温暖化防止が新たに登場して、2003年以降は第3位となっている。 これらに続いて、大気浄化・騒音緩和、リクリエーション(保健休養)、野生動物の生息環境、野外教育・自然教育、きのこ・山菜など特用林産物生産などの機能に対する国民の期待がある。
(2006年11月4日収録、2008年3月19日更新、2012年2月20日更新、2019年12月9日更新、2024年2月17日更新)
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