農業と漁業では年齢別の売上(稼ぎ)に大きな違いがある。農業では年齢や経験の積み重ねが売上の上昇に大きな意味を持つのに対して、漁業の場合は体力が大きな意味を持つ。これを示すため、稲城市の農業者と横須賀市の漁業者に対するアンケート結果を図示した。

 農家に対してヒアリングをすると若い後継者は親父さんの技術には適わないといい、親父さんの方は若い後継者は頼もしいが失敗が多くてなかなかまかせられないというのをよくきく。稲城市のアンケート結果でも、60歳代が主たる農業従事者の農家の売上が538万円と最も高くなっている。さすがに70歳以上であると338万円と低くなるが、それでも30歳代の300万円よりは上である。

 ところが、沿岸漁業が中心の横須賀(東部漁協、長井町漁協、大楠漁協)の漁業者のアンケート結果では、若い漁業者の水揚げ高は圧倒的に年輩の漁業者を上回っている。30歳代以下では平均1000万円以上、70歳代以上では323万円と年をとると稼ぎが3分の1になる。これは若い世代ほど海上作業日数が多いことが影響している。ヒアリングでも漁師は若い頃は沖に出て厳しいが稼ぎになる漁を行い、年をとると地先に近い漁場で経験を生かした釣りなどの漁業に従事すると言ったライフサイクルが存在しているときく。

 年齢と経験に根ざした年功型賃金体系が日本型雇用の典型のように言われるが、どうやら歴史的には農業型のライフサイクルに大きく影響されているのではないかとも考えられる。個人の生涯はその個人のものである。また、技術進歩の早い時代には若い世代ほど稼ぐというパターンも多くなっている。漁業型のライフサイクルに見合った賃金体系や労働スタイルも含めた複線型、複合型の働き方があってもよいのではなかろうか。世代間の相互扶助についても自由度の高い制度設計が重要となっているように思える。

(2004年6月3日収録)


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