都市農業では後継者を確保している農家が多い。例えば、中核農家(60歳未満の男子150日以上農業従事者のいる農家)の比率は、東京都が33.4%と北海道を除く全国の中で最も高い(全国平均14.9%、2000年農業センサス、販売農家対象)。

 これは、都市化の影響で積極的農家しか残っていないためであるが、市街化区域内の都市農業では、アパート・駐車場等の不動産経営からの収入を支えに家計が安定しており、それだけ農業に専心できる環境が整っているからでもある。

 東京都稲城市はなし・ぶどう農家を中心に高い農業所得を得ている優良農業地域であるが、図のように、農家数391戸のうち不動産経営収入が主たる所得源の農家は40.7%にのぼっている。また、経営規模が大きいほど専業的な農家が多いが、経営規模が大きい農家でも不動産経営からの所得は大きな役割を果たしている。

 都市農家において不動産経営収入がどの程度の役割を果たしているか示す統計はないので、このアンケート結果は貴重な資料となっている。

 市場関係をゆがめない農業支援政策として、デカップリング(価格政策と所得政策の分離)が重要な課題となり、日本でも条件不利地だけではない農家への所得補償政策が検討されているが、都市農業では意図せざる所得補償機能が働いており、それが若い後継者の確保で積極的な農業につながっていることは、将来の日本農業の再生にとって示唆するところが大きい。直売や体験農業など消費者や市民との直接的なむすびつきを通じた農業経営形態とともに、都市農業は未来の農業形態を先取りしているとさえいえよう。


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