日本におけるお茶の産地としては、静岡が産出額(生葉と荒茶の計)が703億円と全国の4割以上を占め第1位である。第2位が鹿児島県であり、静岡県の約半分となっている。

 第3位は伊勢茶の三重県、第4位は宇治茶の京都府、第5位は八女茶の福岡県となっている。狭山茶の埼玉県は産出額自体はそれほど大きくない。

 県全体の農業産出額総額に占める割合を見ると、静岡では27%と基幹的な作物となっていることがうかがわれる。次ぎに京都、三重、鹿児島が10%前後とお茶が需要作物となっている。

 ここで荒茶とは、農業者の段階で加工される1次加工農産物を指す。これがさらにお茶屋さん(茶商)によってブレンド、2次加工され、最終製品のお茶として販売される。全国一の茶商の集積地である静岡では、他産地からも荒茶を購入し、静岡茶として販売していたが、今では、産地表示の厳格化によって、静岡で栽培されたお茶を使ったもののみが「静岡茶」と表示されるようになった。

 以下に各お茶産地の特徴を表で示す。

お茶の産地と特徴
お茶産地 特徴 解説
狭山茶
(埼玉県)
狭山火入れといわれる独特の火入れが特徴 関東エリアの銘茶の産地として知られ埼玉県の狭山地方(入間市、所沢市、狭山市など)で生産されるお茶の総称です。埼玉県は寒いところなので、静岡や九州と違いお茶の葉は1年に2回しか摘みとりません。東京など関東エリアで愛飲されています。
静岡茶
(静岡県)
日本最大のお茶の産地 日本のお茶の40%以上の生産量を誇る静岡県。県内には牧の原台地、富士山麓、安部川、天竜川、大井川などお茶の栽培に適し自然環境を活かした銘産地が並びます。主にやぶ北茶などの煎茶や深蒸し茶の生産が主流ですが岡部町は玉露の産地としても有名です。
伊勢茶
(三重県)
1千年の歴史を持つお茶の名産地 静岡、鹿児島に次いで全国第三位のお茶生産量の三重県。伊勢茶は煎茶、深蒸し茶、かぶせ茶などが主に生産されています。特に「テアニン成分」を含むほのかな甘みが特徴のかぶせ茶は全国2位、シェア30%以上の生産量を誇ります。
宇治茶
(京都府)
高級茶の産地として名声高い「宇治茶」 京都府の宇治近郊、和束町や山城一帯は代表的な高級茶の産地として有名です。煎茶を中心に生産されていますが玉露やてん茶(抹茶の原料)、抹茶など国内における高品位なお茶の産地として有名です。
八女茶
(福岡県)
玉露の生産量全国一位 八女玉露 玉露と煎茶の名生産地として名高く古い歴史を持つ福岡県、八女地方。八女市を中心に星野村や黒木町などで生産されている玉露は全国生産量の約半分を占め日本一である事が知られています。
鹿児島茶
(鹿児島県)
静岡県に次ぐ全国第二位の生産量 知覧茶、溝辺茶などの銘柄で有名な「鹿児島茶」。平坦な茶園が多く摘採の効率化が進んでおり荒茶生産量は静岡県についで全国第二位を誇ります。温暖な気候を活かし新茶の摘み取りは4月上旬から始まるため「日本一早い新茶」の産地としても有名です。
(資料)(株)宇治園HP

 さらに、静岡茶の中でも、川根茶、掛川茶、藤枝茶と産地限定の地域ブランドを冠したお茶が存在している。

 世界のお茶は、植物学的には同一種であるお茶の樹の葉の加工方法から、緑茶、烏龍茶(ウーロン茶)、紅茶に3区分される。緑茶は、お茶の葉を加熱して発酵酵素の働きを止めて作るお茶、紅茶は、お茶が褐色になるまで十分発酵酵素の十分働かせて作るお茶であり、烏龍茶は、この2つの中間の半発酵茶である。ここで、お茶の加工における発酵という言葉は、微生物が関与する本来の発酵ではなく、お茶の葉で起こるカテキンの酸化重合の化学変化を指す習慣的な用語法であるに過ぎない点に注意が必要である。

 日本で生産されているお茶はほとんどが緑茶であり、上記の産地の特徴でふれられた茶種は、品種の違いではなく、発酵を止める方法として蒸すか、炒るか等の加工法の違い、また日光を遮って茶葉を栽培するかどうかの違いによって生じている。

 以下に茶種別生産量の構成とお茶の分類表を示す。


お茶の分類
人工的な日陰で栽培* 碾茶(てんちゃ) 遮光期間30日。挽いて抹茶にする。蒸し機(高温蒸気で15〜20秒)→散茶機(高さ5〜6m、一枚毎バラバラになるよう露を切る)→乾燥炉(180度の高温で乾燥)→荒碾茶→仕上げ(切断、選別・乾燥)→碾茶→挽く→抹茶
玉露 遮光期間20日。1835年失敗した碾茶を販売したところ好評で普及といわれる。製造法は煎茶とほぼ同じ。新茶より熟成した方がよいという考え方があり、何年産などを表示したものも。
かぶせ茶 遮光期間茶摘み前3〜10日。煎茶として販売。7〜10日、長めにかぶせた茶は玉露としても販売。
日光の下で栽培 釜煎り茶 発酵酵素の働きを止める方法として煎茶の蒸しでなく、釜で炒る方法を採用したお茶。中国など世界の緑茶生産の80%は釜煎り茶だが、日本では反主流。
煎茶(普通蒸し) 南北が原則のかまぼこ型の畝で栽培。
(機械荒茶製法)生葉コンテナー→蒸し機→冷却機→葉打ち機(送風で水切り)→粗揉機(焙炉上で回転揉み)→揉捻機(力を入れ葉の中心の水分を押し出して乾かす)→中揉機(玉解き熱風乾燥)→精揉機(尖った形に整えながら乾かす)→乾燥機
深蒸し煎茶 標準蒸し時間30秒に対して60〜120秒くらい蒸す煎茶。
蒸し製玉緑茶(蒸しグリ茶) 煎茶の簡易型。戦前ソ連南部イスラム圏へ輸出しようとして中国産釜煎り茶に似せた煎茶として開発されたもの。精揉工程をなくし仕上げ乾燥で整形。
番茶 最初に摘採する4月下旬〜5月上旬の一番茶でなく、6月中旬に摘む二番茶以後のかたい茶葉で製茶
*覆い下(おおいした)茶園でつくるお茶(化学繊維の寒冷紗(かんれいしゃ)による遮光が主流、従来は葦簾(よしず)と藁(わら)の本簾(ほんず)作り)。日光を遮ると光合成のため不足する日光を有効に使おうとして、茶樹が葉緑素を増やす。また、日光を浴びると茶樹が合成するアミノ酸からカテキンが生まれるが、覆い下茶園では日光が余り届かないのでアミノ酸が多く含まれたお茶となる。
副産物茶 茎茶、芽茶、粉茶
加工茶 抹茶 12C末栄西が伝えた古くからのお茶であり中国で滅びた後、日本だけで受け継がれた。
ほうじ茶 大型の番茶を強火で狐色になるまで炒って製造。色は茶色だが発酵を止めているので緑茶の仲間。茎茶を混ぜて、あるいは茎茶だけ焙じるものもある。
玄米茶 煎茶や番茶をベースに炒ったお米やはぜたもち米(白花)を混ぜたお茶。茎茶、抹茶を加えたものも。
(資料)高宇政光「お茶は世界をかけめぐる」筑摩書房(2006)

(2007年3月17日収録)


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