家計調査の品目別集計は月別、年次別のほか、毎月、日別にも集計された結果が公表されている。これを使えば、「うなぎのかば焼き」の消費支出が土用の丑の日に集中するなどの状況を分析することができる。こうした日次分析の例は図録0365(予定)参照。

 ここでは、こうした日別集計を曜日ごとに再集計した結果を使い曜日別の消費支出の構造と動向を探ってみよう。

 ただし、e-Statの原データからの複数年にわたる日別データの曜日別再集計は手間がかかる。そこで、ここでは、家計調査を実施している総務省統計局の総務課長がまとめた分析結果を引用することにする。

 冒頭グラフへのコメントに入る前に曜日別支出の全体像を概観しておこう。

 曜日別で支出が多い日は、下図のように「金土日」である。費目別には、食料の支出は「土日」が多く、保健医療やその他(世帯主こずかいを含む)の支出は週末の「金曜」に多いという特徴がある。2000年以降の時系列変化としては、最多だった「金曜」、あるいは4番目に多い「月曜」やその他の平日が縮んだ分、「土日」の割合が大きくなってきている。


 冒頭のグラフには肉類、魚介類、野菜、果物といった生鮮食品の曜日別支出シェアと掲げた。参考に、外食(飲酒代とそれ以外の外食代)の曜日別シェアを同時に掲げている。

 生鮮食品については、野菜は「火曜」の支出が最も多く、家族が揃う土日に消費が増える魚介類、果物は「土曜」、肉類は「日曜」の支出が最も多くなっている。毎日食べることが多く、土日のまとめ買いだけでは足りなくなる野菜は、火曜日にも多く買うからであり、一方、肉類などの野菜以外は、家族が揃う土日に、スーパーに行って購入し、その日のうちに料理して食べることが多いからであろう。

 参考に掲げた外食については、飲酒は、「日曜」より「金土」の方が多く、飲酒以外の外食は「土日」、特に「日曜」が多くなっている。飲酒は、職場や趣味の仲間と出掛けることが多く、一般の外食は家族団らんで楽しむというライフスタイルのあらわれであろう。

 生鮮野菜4品目の曜日別消費を2000年代の前半と2010年代の後半で比較したグラフについては、ほうれんそうやだいこんといった和野菜は消費が全体にダウン、一方、トマト、ブロッコリーといった洋野菜は消費が伸びている点に、まず、気づくが、曜日別の支出については以下の2点が目立っている。
  • 曜日によらず毎日の支出額に余り差がなかったのが特定の曜日にまとめ買いする傾向になっている。特に和野菜でこの傾向が顕著である。
  • いずれの品目も「火曜」の支出が最も多かったのが、「日曜」の支出が最も多いパターンに変貌している。
 この点について、原資料の論考では、次のように述べられている。

「スーパーでは、土日のほか、火曜日にも特売が多いといわれる。2000年頃は「食料」等の中に、火曜日に最も支出が多くなるものが多数あったが、近年は減少傾向にある。すなわち、2000〜2004年に、火曜が最多であった品目は86あったが、2015〜2019年では52品目に減少している。同じことを食料関連品目だけで見ると、73品目から40品目に減少しており、この変化のほとんどが食料関連品目で起きていることが分かる。

 こうした変化の背景には、日曜日に自家用車で大型店に出向き、大量の品物を買いだめする傾向が強まったことがあるのではないかと筆者は推察している」(永島勝利2020)。

 もちろん買いだめを容易にするような、野菜を傷みにくくした流通過程におけコールドチェーンの普及や各家庭が保有する冷蔵庫の野菜室の進化といった背景もあろう。

(2020年8月12日収録)


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