新種改良によって、トウガラシの辛さのランキングは更新され続けている。現時点の激辛唐辛子の辛さランキングを上に掲げた。関連して日本人の好きなカレーの辛さについては図録0416参照。

 キャロライナ・リーパーは、ゴースト・ペッパー(かつて世界記録保持していた)とレッド・ハバネロの交配種であり、2013年現在、ギネス世界記録で世界で最も辛い唐辛子に認定されており、それまで記録を保持していたトリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラーに勝っているという(ウィキペディア2017.10.23)。


 辛さランキングは品種改良などでさらに更新されていく。以下に最新のランキングを掲げた。2位のペッパーXは薄黄緑色をした米国生まれの唐辛子。ギネス認定は受けていないが、世界一辛い唐辛子としても知られている。4位のキャロライナ・リーパーの開発者エド・カリーにより生み出されたといわれる。

順位 品目(SHU:スコヴィル)
1 リル・ニトロ(900万SHU)
2 ペッパーX(318万SHU)
3 ドラゴンズ・ブレス・チリ(248万SHU)
4 キャロライナ・リーパー(156万9000SHU〜)
5 トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー(150万SHU)
6 鷹の爪(約4〜5万SHU)
7 ハラペーニョ(3500SHU)
(注)1位のリル・ニトロは米国のVat19という会社が販売しているグミであり、唐辛子ではない。
(資料)オリーブオイルをひとまわし「想像を絶する辛さ…。『世界で一番辛い食べ物』って何?」(2022.2.23)

 以下には、更新前のランキングとコメントを掲げた。


 スコヴィル単位という抽出液を何倍に希釈すると辛さを感じなくなるかということで計測する辛さの単位による種々のトウガラシ(唐辛子、とうがらし)の辛さランキングを示した(アマール・ナージ「トウガラシの文化誌」晶文社、原著1992年)。気候や土壌でトウガラシの辛さは同じ品種でもかなり異なってくるので厳密なランキングは難しいようであるが、これはその一例である。

 図に示したように世界一辛いトウガラシはハバネーロ(ハバネロ)であるが、そのなかでもレッドサビナという栽培種が57.7万スコヴィル単位でもっと辛いとされていたが、SB食品が開発したSBカプマックスが65.6万スコヴィル単位を記録し06年にギネス認定された(SB食品HPより)。ところが、ウィキペディア情報では、07年のギネス認定で新たに北インド及びバングラデシュ産のトウガラシであるブート・ジョロキア(Bhut Jolokia)が約100万スコヴィル単位で世界一となったといわれる。

 このように世界一の座は更新されているようであるが、通常に普及しているトウガラシとしてはなおハバネーロが一番辛いといっても間違いではなかろう。

 実は辛くないトウガラシ(甘味種)としてピーマン、パプリカ(ベル・ペッパー)がある。パプリカは、オスマントルコ時代にインド・ジウからハンガリーに伝わったトウガラシから辛味より風味を重視した結果、品種改良により生み出されたものといわれる。今でも世界最大のトウガラシ消費地域はハンガリー周辺であるが、パプリカとそのスパイス加工品の消費が多いためである(図録0460参照)。

 図に示したようにトウガラシといっても辛いものから辛さのないものまで多種多様な種類があることが分かる。

 以下に世界のトウガラシの種類について簡単にまとめた表を掲げた。

世界のトウガラシ
本鷹 日本 細長くて大変辛い。生産量は少ない。※「三鷹」は、「本鷹」と「八房」を交配させて生まれた種類。
八房
(やつぶさ)
日本 果実がまとまって房なりするところから名づけられた。赤く熟し、辛味は一般の鷹の爪の半分程度。収穫量が多いので、鷹の爪の代用品として栽培される。
島唐辛子 日本 九州、沖縄で作られている非常に辛い唐辛子。泡盛漬けの調味料として使う。
獅子唐 日本 果実の先端部分がへこみ、その中に小突起を持つ。その形が獅子面に似ていることからこの名が付いたといわれている。関西では「青とう」と呼んでいる。
伏見甘 日本 高温を好む作物で、夏に出回る。辛味はほとんどなく、果肉はやや厚く甘味がある。「伏見辛」と同群であるが、現在「伏見唐辛子」といえば伏見甘をさすことが多い。
天鷹(中国) 中国 本鷹や三鷹の生産量が少ないため、中国で同じものを生産している。日本へは「天鷹」という名前で入ってくる。
タイ・ドラゴン、熊鷹 アジア各地 大型のカイエンヌ類。タイでプリッキーファ(Phrik kheefa) 、マレーシアでラダ(Lada)、パディ(Padi)、インドネシアでロンボック(ロンボク)(Lombok)と呼ばれるものが同類。日本では熊鷹がある。
アケー・ロータ・ペッパー インド 北インド産の黒紫色の唐辛子。“コップ1杯の水が必要”という意味で、とてつもない辛さからこの名が付いた。
ベル・ペッパーとピーマン ハンガリー、世界各地 甘口の食用とうがらしは基本的形状で2種類に分けられる。一つは欧米でベル・ペッパーと呼ばれるもので、日本で流通業者がピーマンやパプリカと呼称する野菜。ハンガリー人が唐辛子の辛味を遺伝的に弱めて作り出した品種であり、ハンガリーのパプリカはビタミンCが豊富。ピーマンやパプリカは単にフランス語やオランダ語のとうがらしの意味から来ているが、日本では釣鐘状の小型とうがらしがピーマン、大型のものがパプリカと通称される。もう一つは棒状のカイエンタイプで欧米ではスウィート・バナナなどと呼ぶものです。日本のこのタイプにはしし唐がある。
カイエンヌ
(カイエン)
各地 コロンブスの大陸発見後の16世紀から17世紀にアジアを始め世界中に最も普及した種類で、各地で多様化と進化を遂げている。名は南米北部のフランス領ギアナ(Guiana)の首都に因む。
バード・アイ
(バーズアイ)
各地 米国、中南米で普及しているチルテピン種。欧米ではバーズアイ(bird's eye)、または原種という意味で「唐辛子の母」とも呼ばれる。原種に近い丸みを帯びた小型種。メキシコで普及しているペキン(ピキン)も同種。
ハバネーロ
(ハバネロ)
メキシコ マヤ人が常食するという、世界で最も辛いとされる、ピーマンを小さくしたような丸みのある赤い唐辛子。辛味は一過性で香りがよい。
チレ・デ・アルボル メキシコ 樹木のような(アルボル)幹をもつためにこのように呼ばれる。メキシコのオアハカ州(Oaxaca), ハリスコ 州(Jalisco)、ナヤリット 州(Nayarit)が産地として有名。形状はカイエンヌタイプ。
ポブラノ メキシコ 名称はメキシコのプエブラ州(Puebla)由来。形状は日本で一般的にピーマンと呼ぶタイプに近い大型種。スペイン、メキシコ、 テックスメックス(TEXMEX) など米国南西部の料理には欠かせない品種。
タバスコ メキシコ メキシコ原産。タバスコは日本でとうがらし文化が未熟な頃はペッパー・ソースの代名詞ともなっていた。最近では消費者にも、とうがらしの種名であることが理解され始めている。
アナヘイム 米国 名称は旧スペイン、メキシコ領のカリフォルニア州アナハイムに由来。形状はポブラーノ同様に日本のピーマンをやや長くした大型種。ポブラーノの代用品とも言われる。
セラノ 米国・メキシコ メキシコのプエブロ(Pueblo)原産といわれる。米国で普及しているが、メキシコからの輸入が多いといわれる。グリーンが主体で使用される細長い小型種。成熟後は赤系の多様な色を見せる。欧米では、この種もバーズアイ(bird's eye)とも呼ばれる。
ハラペーニョ 米国・メキシコ 名前はメキシコ南部、ベラクルス州の州都ハラパ(Xalapa)(Jalapa)由来。米国の旧スペイン領地域を中心に、現在のメキシコまで広く栽培されている中辛種。乾燥品はチポートレ。
ロコト ペルー さくらんぼのような形で、火を吹きそうなくらい辛い。
(資料)こだわりの乾物屋山城屋HP、ロハスケ・王壮快の健康マーケッティングレポートHP

(2007年12月8日収録、2017年10月23日更新、2022年2月23日更新、2023年7月3日キャロライナ・リーパー東京新聞図)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 食品・農林水産業
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)