回答結果は年齢調整済みの値なので高齢化による変化は除かれている。 各年1〜2月の調査なので2020年もコロナな影響は考えなくともよさそうだ。 「好きな味」については、薄味、濃い味、さっぱり味、甘い味、辛い味、スパイシーな味といった選択肢の設問もあるが、ここでは、しょうゆ味、昆布だし味といった「味のベース」で味の好みをきいた設問の結果を使った。 好きな味は、回答率の高い順に、しょうゆ味、昆布だし味、かつおだし味、塩こしょう味、みそ味と続いているが、好きな味の変化としては、2012年には、上位3つの味が他を圧倒していたのが、だんだんと多様化してきている様子がうかがわれる。 和食の基本である「しょうゆ」と昆布・かつおの「だし味」に馴染んでいた日本人が、だんだんと和食にこだわらない食生活へ移行しつつある動きを反映しているのではなかろうか。 各項目への回答率は全体として低まる傾向の中で、「塩こしょう」と「塩」は横ばいか上昇の傾向にある点が目立っている。これも洋食の基本的な味づけに慣れてきている証拠と見れないこともなかろう。もっとも特異な洋食味ともいえる「カレー」や「チーズ」は特段躍進してはいない。 次は「苦手な味」について見てみよう。 苦手な味は回答率の高い順に、「苦い」、「辛い」、「塩辛い・しょっぱい」、「すっぱい」、「濃い・こってり」、「スパイシー」となっている。 2012年からの動きを見ると「辛い」と「スパイシー」は明確に上昇傾向にあり、それ以外は全体として低下傾向にある。 「辛い」と「スパイシー」の上昇傾向は、そういう味を苦手とする人じたいが増えたというより、しばしば繰り返される激辛ブームやエスニック料理ブームの中で、一定数は必ず存在する辛さやスパイシー味に馴染めない日本人がそういう味にふれる機会が増えて、特に「苦手だ」と回答する人も多くなっているからではないかと想像される。 それ以外の苦手な味が減っているのは、国際化に応じた食の多様化を全体として受け入れる日本人の姿勢を反映しているのではないだろうか。 上記の「日本人の好きな味」への回答結果が和風味から多様な味への動きと考え合わせると、和風の微妙な味に慣れていて、苦すぎたり塩辛すぎたりする味は苦手だった日本人の舌が、辛さやスパイシー味を除く洋食やエスニック料理の刺激的な味に鈍感になってきているとも見れるのである。 参考までに、下図に、辛い味やスパイシーな味を苦手とする人の割合の推移をそれらを好きとする人の割合の推移とともに掲げた。2017年から2020年にかけては、これらの味を好きな人も苦手な人も両方増えており、単純に苦手になっている訳ではないことが分かる。なお、スパイシーな味については、好きな人が苦手な人を大きく上回っている点が興味深い。辛い味の方はいまや苦手な人の方が好きな人より多いが、苦手な人が増えているのは、日本人の舌が幼児化しているためという見方もできるかもしれない。 (2021年11月17日収録)
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