内閣府(旧総理府)世論調査では、「外交に関する世論調査」で、世界各国にたいする国民の親しみの程度を毎年調査している。調査は各国・各地域に対するものであるが、上図では、米国、韓国、中国に対する毎年の調査結果を1つの図にまとめて示した。

(1)対米国

 米国に関しては、貿易摩擦など様々な事件があったにせよ、一貫して世界の国々の中では最も多い7〜8割の人が安定的に親しみを感じており、日本にとっては、やはり特別な国となっている。

 米国に関して、03年から04年にかけては75.8%から71.8%の低下であり、イラク戦争の泥沼化の影響の可能性がある。05年〜07年は若干の回復となっている。08年は米国初の世界金融危機、あるいは北朝鮮のテロ支援国家指定解除(10月11日)が影響したためか、若干低下している。

 2009年は大きく上昇し78年以降の最高値となった。調査は普天間基地の移設問題を巡って日米関係がぎくしゃくする前の10月に実施されており、前年11月の大統領選で選ばれ、新政策が話題となった「オバマ米大統領への高い関心」が理由とみられる。4月の欧州歴訪時に行った核廃絶へ向けた演説で「米国には、核兵器を使った唯一の国として行動を起こす道義的責任がある」とし、被爆地の広島、長崎訪問にも意欲を示したことが影響していると考えられる(図録5218参照)。

 米国に対する海外からの目が好転したのは日本ばかりでない。中南米18カ国に対するLationbarometroによる2009年9〜10月の世論調査によると米国に好意的な回答者は昨年の58%から74%へと上昇しているという(英国エコノミスト誌2009.12.12号、図録8824参照)。

 2010年は米国への親しみの値が過去最高値を示した。普天間基地移設問題が政治問題化したが米国への悪感情には結びついていない。むしろ中国との尖閣諸島沖中国漁船衝突事件などを契機とする中国への悪感情のカウンターバランスとして日米同盟が改めて見直された可能性があろう。

 2011年は米国への親しみの値が過去最高値を示した。東日本大震災で米軍が展開した『トモダチ作戦』など献身的な支援に対して国民が好意を持ったのではないかと指摘されている。

 2012年は沖縄在日米軍に関して10月以降、沖縄県民反対の中でのオスプレイの普天間飛行場配備、米兵集団強姦致傷事件とそれを受けた外出禁止令(およびそれの米兵違反複数事件)と評判が上がる筈はないが、調査時点(9月27日〜10月7日)の問題、あるいは沖縄県民と国民全体との温度差から値は上昇している。2013年はこれらの影響か、やや低下している。

 2017年は80%を切って大きく低下した。これは、アメリカ・ファーストを掲げ、今年就任したトランプ大統領の評判が世界的に悪いことが影響していよう。2018年も同様の要因から低下が続いている。ただし、2019年にはトランプ大統領の奇行に慣れっこになったのか、値はむしろやや上昇した。それ以降は、値が上昇傾向にある。

(2)対中国

 中国は1980年代までは、米国と同等の親しみを日本人は感じていたが、1989年(平成元年)6月4日の天安門事件以後、急速に親近感は冷え込んだ。親しみを感じる人は7割以上から5割前後へ落ち込み、それ以降、やや低下傾向を辿っている。

 中国に関して、03年から04年にかけては47.9%から37.6%の大幅な低下となっている。中国原潜の領海侵犯や胡錦濤主席の小泉首相靖国参拝批判首脳会談より前であるため、8月のサッカー・アジア杯での中国人観衆の反日的言動が影響していると見られる。05年は、その後の4月反日デモ、小泉首相靖国神社参拝問題、東シナ海ガス田開発、中国の軍備増強などが影響して、32.4%とさらに最悪の状態に落ち込んだ。2006年は安倍首相が首相就任直後に中韓訪問(10月8日〜9日)を行って関係改善に乗り出したことも影響したか、やや回復している。

 08年は年初から中国産食品の安全問題がおこったためか若干低下している。5月には中国国家主席としては10 年ぶりに胡錦濤国家主席が訪日したが目立った影響はなかった。

 2009年には値が大きく回復したが、中国製ギョーザ事件など対中イメージを損なう問題が取り上げられることが少なくなったこと以外には目立った背景は見あたらない。

 2010年には値が大きく低下した。9月に尖閣諸島沖での中国人船長逮捕をめぐり、中国政府が日本に対して厳しい対応を行う一方で、北京、上海など大都市4箇所で「日本は釣魚島から出て行け」などと叫ぶ対日抗議行動が相次ぎ、10月にはさらに時間をおいて内陸部の成都、綿陽などで学生らの反日行動が激化したのを受けて、日本人の対中感情が悪化したといえよう。

 2011年は昨年の事件から時間が経過して、やや回復している。

 2012年は9月の尖閣諸島国有化を機に日中の対立が先鋭化、その後中国国内でデモが発生、尖閣周辺海域での中国公船が航行するなどの影響で親しみの比率ははじめて20%を切った。このため、この年以降、かねてより親しみの薄かったロシアの値よりも中国が下回るに至っている。

 2013年は対立が続いているのでやはり低い値である。

 2014年は中国の沖縄県・尖閣諸島周辺海域への進出やサンゴ密漁などにより日中関係がさらに冷え込んだ状況を反映して、中国への親しみは14.8%と過去最低にまで低下した。1980年には8割近くが親しみを感じていたのと比較すると隔世の感がある。なお、2014年の調査後の11月に中国の習近平国家主席と2年半ぶりに日中首脳会談が実現し、これ以上日中関係を悪化させるのは両国にとって得策はない点だけには意見の一致を見てサンゴ密漁からの引き上げなど一定の成果を見た影響は反映されていない。

 2016年調査も依然として対中感情は冷え切ったままである。その後は、やや回復の傾向にある。

 その後も沖縄県・尖閣諸島周辺で相次ぐ領海侵入などを背景に、親近感は低迷している。2023年には過去最低を更新した。

(3)対韓国

 韓国の1988年の値が急増したのは前年の民主化宣言に続きソウル・オリンピックが開催された影響であろう。その後、ワールドカップ(2002年開催予定)日韓共同開催が1995年に決定してから、相互交流が深まり、親しみを感じる人も増加し、2000年以降2004年までは、中国を上回って、米国に次いで日本人が親しみを感じる単一国となった。特に、若い層を中心に親しみを感じるものが増加した点が目立っている(図録8855参照)。また、韓国への日本人旅行者数もこれと平行して増加している(図録7100参照)。

 韓国に関して、03年から04年にかけては55.0%から56.7%のかなりの上昇となっている。「ヨン様ブーム」「韓流ブーム」が反映していると考えられる。

 ところが、05年には、中国と同じ小泉首相靖国参拝問題、そして竹島(独島)領有権問題が影響して、51.1%とかなりの低下となった。

 2006年は、安倍首相が首相就任直後に中韓訪問(10月8日〜9日)を行って関係改善に乗り出したにもかかわらず、なお、割合が低下している。これは、中年層は親しみを感じる人が回復したが、若者層を中心に親しみを感じる人が減っているからである。

 2007年は若者層の人気回復により54.8%と再度親しみを感じる人が多くなっている(図録8855参照)。調査月の前月末に積極的なアジア外交をかかげる福田政権が新たに誕生した影響もあろうが、中国は目立って回復していないのでむしろ親韓基調が再現したと見た方がよかろう。日韓各地17カ所で行われた朝鮮通信使400周年記念の再現行列(図録3999)が影響している可能性もある。

 2008年は、7月に学習指導要領解説書に「竹島」を明記され、韓国側が反発し、米国産牛の輸入再開問題から引き続く李明博政権への批判もあって韓国ではかなりの騒動となったが、日本側は若者は別にして全体としては余り気にしておらず、むしろ李明博新大統領の日本公式訪問、天皇皇后両陛下と会見(4月)もあってか「親しみを感じる」比率は過去最高となった。

 2009年は前年に引き続き値が上昇し、韓国に親しみをもつ者ははじめて6割を越えた。ウォン安による観光交流の拡大の影響もあろう。中高年齢層での値の上昇が目立っている(図録8855参照)。

 2012年は8月の李明博大統領による天皇の反日独立運動家への謝罪要求(訪日の条件として)及び島根県・竹島上陸などの影響で親しみは急降下、15年ぶりに3割台に落ち込んだ。2013年も朴槿惠(パク・クネ)新大統領が親日家と見なされるのを恐れて対日強硬姿勢を崩しておらず、なお、親しみは落ち込んだまま。

 13年12月に安倍首相が靖国参拝を行ったのを受けて、2014年も、朴槿恵(パククネ)大統領による従軍慰安婦問題でのかたくな態度、あるいは産経新聞ソウル支局長が書いた大統領記事についての在宅起訴などによって日韓関係がさらに悪化。これを反映して親しみは中国と同様に過去最低にまで低下した。韓流ブームなどで一定期間親しみが増していただけにこの落ち込みは目立っている。

 2015年12月に慰安婦問題で日韓が合意したが、2016年1月と11月の結果はやや反転程度であり、国民感情への影響は限定的だったようだ。ただその後はやや回復傾向にある。

 2018年には10月に韓国人の元徴用工による損害賠償請求訴訟で韓国最高裁が新日鉄住金の上告を棄却、賠償命令が確定(1965年日韓基本条約に伴う請求権放棄合意違反)、11月には韓国が慰安婦問題に関する日韓合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」の解散手続きに入ると発表し(日韓合意事実上破棄)、さらに12月には自衛隊機に対する標的レーダー照射事件と日韓関係は悪化した。

 さらに2019年には8月には、日本が貿易上のホワイト国から韓国を除外したのに対して、韓国が日韓で防衛秘密を共有する日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄を決定するなど日韓関係はさらに悪化し、改善へ向けたきっかけもつかめないでいる状況である。

 こうした状況を反映して、2019年10月には26.7%と過去最低の水準にまで急落している。2020年はやや回復したが、元徴用工訴訟問題などでなお水準は低い。

 2022年には、韓国で5月に前政権の対日政策を見直すとしたユン・ソンニョル大統領が就任して、値が上昇した。2023年も日韓関係の改善によって引き続き上昇した。

 年代ごとの落ち込み具合については図録8855参照。

(4)その他

 ロシアに対する親近感は旧ソ連時代から低いままだが、2020年は北方領土交渉の停滞などからさらに低下した。2022年には、2月にロシアによるウクライナ軍事侵攻がはじまり、親しみ割合は2022年、23年は続けて過去最低を更新している。

 一貫して評価の低い日本と異なり、西欧諸国では対ロシア評価は高評価から低評価への大きな起伏を見せている点については図録8989参照。

 なお、各国に対する世代別の動きは図録8855、韓国側から日本は親しみを感じるかの結果は図録8005参照。

(2004年12月21日更新、2005年12月31日更新、2006年12月11日更新、2007年12月3日更新、2008年12月8日更新、2009年12月21日更新、2010年12月20日更新、2011年12月5日更新、2012年11月24・25日更新、2013年11月25日更新、2014年12月20・21日更新、2016年3月14日更新、図にロシア付加、2017年1月7日更新、12月26日更新、2018年12月23日更新、12月31日補訂、2019年12月21日更新、2021年2月20日更新、2022年1月22日更新、2023年3月16日更新、2024年1月30日更新)


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