日本の主なタワーの高さを図にした。世界のタワーについては図録7222参照。

 日本のタワーといえば、1890年に開業し明治期から大正末期まで東京・浅草にあった12階建ての塔、浅草公園凌雲閣(高さ約52m)が有名であったが、関東大震災で半壊し、解体された。西では、1903年(明治36年)に開催された第5回内国勧業博覧会の会場跡地に、パリの凱旋門にエッフェル塔の上半分を乗せたような初代通天閣が1912年(明治45年)に建設され、名所となった。現在の通天閣は1956年に開業した2代目であるが、図の中では最も古い。

 戦後、高度成長期に、テレビ放送時代の到来とともに、名古屋テレビ塔を皮切りに全国の都市にタワーが順次つくられていった。中でも1958年開業の東京タワーはブームを引き起こし、その後も長く東京や日本のシンボルとなった。

 1973年のオイルショックを境に高度成長期が終わるとタワーの建設はなくなり、主なタワーの中に1970年代〜1980年代前半に開業したものはない。

 バブル経済とともに再度タワー建設ラッシュが起こった。主なタワーのうちでは1986年開業の千葉ポートタワーにはじまり次々にタワーが開業し、バブル時代に計画されたものが1990年代半ば頃までに建設されていった(図録2670にも地方自治体庁舎についての同様な例)。

 失われた10年、20年の時代に入ってタワーの建設は止んだ。例外は、2006年に建て替えられて再開業した五稜郭タワー、および東京タワーに代わる新しいテレビ電波塔・携帯機器向け電波塔として建設が必要とされ2012年に開業した東京スカイツリーの2つのみである(東京スカイツリーについては図録7222参照)。

 木曽川のほとりに十字に架かる2本のアーチからなるツインアーチ138は、国営木曽川三川公園138タワーパークのメーン施設(1995年完成)であり、アーチ式タワーとして米国ミズーリ州セントルイス市にある放物線型の「ゲートウェイアーチ」(192メートル)に次ぎ、世界2位の高さという(東京新聞「わが町日本一(愛知県一宮市)」2011年7月24日)。

 地域分布としては、タワーの数では東日本より西日本の方が多いことが見て取れる。

日本の主なタワー
  名称 高さ(m) 所在地 開業年次 解説
1 さっぽろテレビ塔 147.2 札幌市中央区 1957 大通公園の東端に位置し、札幌市街地を一望できる。テレビ放送開始に伴い電波塔として完成したが、テレビの電波放送は1965年に終了。現在はFMラジオの放送波を出している。映画「ゴジラVSキングギドラ」ではゴジラに破壊される。内藤多仲が設計
2 五稜郭タワー 107 北海道函館市 2006 幕末の箱館戦争で知られる五稜郭に隣接する。初代のタワー(高さ60m)は1964年に完成。その後建て替えられ現在は2代目
3 水戸芸術館 塔 100 水戸市 1990 正四面体が垂直方向へ積み重なるデザインが特徴。市制100周年を記念して建てられた。芸術館は劇場やギャラリーが入る複合文化施設。磯崎新氏設計
4 銚子ポートタワー 57.7 千葉市銚子市 1991 銚子港の前に立つツインタワー
5 千葉ポートタワー 125.2 千葉市中央区 1986 千葉県の人口が500万人を超えた記念に建てられた。絶景の展望レストランもある
6 東京スカイツリー 634 東京都墨田区 2012 高さ634メートルは、かつて東京都、埼玉県および神奈川県北東部におよんだ旧国名「武蔵国(むさしのくに)」にちなみ、語呂合わせで決まった。自立式電波塔としては世界一高い。タワーの水平面は、下が三角形で、上層になると円形に変化する。縦方向のデザインは、刀のそりなどに由来する優美な曲線を表す。構造も法隆寺五重塔の心柱を参考に、全体に日本の伝統を継承する設計が試みられた
7 東京タワー 333 東京都港区 1958 正式名称は日本電波塔。「大阪の新聞王」前田久吉によって建てられた。自立式鉄塔としては東京スカイツリーに抜かれるまで約50年間、日本一の高さを誇り、都民のシンボルとして親しまれてきた。現在はFMラジオの放送波を出している。内藤多仲が設計
8 横浜マリンタワー 106 横浜市中区 1961 かつては灯台の役割も担った。来場者数の低迷で2006年に閉鎖されがた、全面的にリニューアルして09年に再オープンした。来年開業55周年を迎える
9 クロスランドタワー 118 富山県小矢部市 1994 複合施設「クロスランドおやべ」の中にある地上100mの展望台からは散居村や立山連峰、白山連峰が一望できる
10 東尋坊タワー 55 福井県坂井市 1964 岸壁の上にそびえる。地上55メートルの眺めを堪能できる
11 京都タワー 131 京都市下京区 1964 京都駅の正面。一切鉄骨を使っていない円筒形のタワー。京都のまちなみを海に見立て、灯台をイメージして設計されたといわれる
12 東山スカイタワー 134 名古屋市千種区 1989 東山動物園に隣接しており観光地としても人気。名古屋駅、名古屋テレビ塔、名古屋城などの眺めを楽しむことができる
13 ツインアーチ138 138 愛知県一宮市 1995 木曽川沿いにある国営木曽三川公園に立つ。木曽川の雄大な流れを表現したもの。138の名称と高さは所在地の「いちのみや」の語呂合わせ
14 名古屋テレビ塔 180 名古屋市中区 1954 複数の放送局が一本の電波塔を共同利用する集約型電波鉄塔として日本初。「塔博士」内藤多仲(たちゅう)が設計した最初のタワーでもある。愛知、岐阜、三重の3県にテレビの電波を送っていたが、2011年7月にテレビ塔としての役割を終えた。現在はマルチメディア放送の電波を出している。名古屋の中心部を展望する町のシンボルとして市民に親しまれている
15 梅田スカイビル・空中庭園展望台 173 大阪市北区 1993 京都駅も手掛けた原広司氏による設計。「世界の建築TOP20」として英紙で紹介されたこともあり、外国人観光客や建築家に人気がある
16 通天閣 103 大阪市浪速区 1956 繁華街の新世界とともに歴史を刻んできた。初代は1943年の火災による焼損のため解体された。現在の2代目は内藤多仲の設計。タワー内に安置されたビリケン像が街を見守る
17 神戸ポートタワー 108 神戸市中央区 1963 和楽器のつつみを長くしたような双曲面構造の美しい概観と独特のパイプ構造が特徴。日本建築学会作品賞などを受賞。阪神大震災では大きな損傷を免れ、いち早くライトアップし、市民に希望を与えた
18 ゴールドタワー 158 香川県宇多津町 1988 金色に輝くハーフミラーに覆われている。建物の中にはボウリング場などのアミューズメント施設がある
19 夢みなとタワー 43 鳥取県境港市 1997 1997年に開かれた博覧会のシンボルタワーとしてオープン。環日本海交流諸国の民芸品・民族衣装の展示や商店街なども併設
20 海峡ゆめタワー 153 山口県下関市 1996 頂上にある球形の総ガラス張り展望室は世界初。瀬戸内海と日本海、本州・九州の風景を一望できる
21 博多ポートタワー 100 福岡市博多区 1964 内藤多仲が設計した「タワー六兄弟」と呼ばれるタワーのうち、最後に建てられた
22 福岡タワー 234 福岡市早良区 1989 市制施行100周年を記念して開催されたアジア太平洋博覧会の関連施設としてオープン。8000枚ものハーフミラーで覆われた正三角柱の概観が特徴だ。博多湾からの乗客を迎えるシンボルで、展望室のほか、船の動きを他船に伝える無線局がある
23 別府タワー 90 大分県別府市 1957 内藤多仲の設計。東に四国を望む別府湾、西に湯煙たなびく別府の温泉街を見渡すことができる。タワーキャラクターの別府三太郎が迎えてくれる
24 グローバルタワー 125 大分県別府市 1995 別府国際コンベンションセンターを中心とするビーコンプラザに付属して建てられた。巨大な球体の一部を切り取ってできた形にタワーが設計されている。磯崎新設計
(注)全日本タワー協議会のタワーとそれ以外で監修者西村謙司氏が注目するタワー
(資料)東京新聞大図解「日本のタワー」2015.9.20

(2015年9月22日収録)


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