森ビルは東京都港区麻布台に2023年11月24日に住宅、商業施設、オフィス、医療機関などからなる複合施設「麻布台ヒルズ」を開業する。中心となる超高層ビル「森JPタワー」は地上64階建て高さ330メートルで「あべのハルカス」(大阪)を抜き日本一の高さとなる。

 東京都墨田区押上・業平橋地区に、2012年5月22日、タワーとしては世界一の高さの東京スカイツリーが開業した。浅草の近くなので、相乗効果で、東京東部の新しい観光拠点となることが期待されている。

 このタワーが完成する前の2009年10月16日、このタワーの高さを当初の610メートルから634メー トルに変更するとの発表があった。読売新聞2009.10.16によれば「中国・広州で今年末に完成予定のテレビ塔(610メートル)が、カナダ・トロン トのCNタワー(553メートル)を抜き、ワイヤなどで支える必要のない自立式の 電波塔としては世界一の高さとなるため、...「2012年春の開業時に世界一と 言えるようにしたい」と、設計変更に踏み切った」とのこと。なお、634メートルに決まった背景には東武鉄道グループのトップが武蔵(六三四)高校出身であるからという有力情報もある。ただし、その後、この点については、634メートルの根拠として「武蔵の国」に立地しているからというやや苦しい説明が公表された。

 ここでは、これらのタワーを含め、世界の主なタワーの高さをグラフにした。参考にタワー以外の超高層建築物も掲載してある。タワー(塔)であるから縦の棒グラフが適当であるが、案外、こんなグラフは描かれていないようだ。日本の主なタワーについては図録7222a参照。

 「あべのハルカス」は近畿日本鉄道が大阪市阿倍野区に建設、2014年3月7日にオープンする300メートルの高さの超高層ビルである。「横浜ランドマークタワー」は、20年近く「日本一高い超高層ビルの座を守ってきたが、「あべのハルカス」が、建設中の2012年8月時点で高さ300mに達し、日本一の座をあけ渡した。ハルカスは60階建てなので70階の横浜ランドマークタワーが階数の点ではなお日本一である(東京新聞2014.2.28)。

 参考までに、以下に日本一となった主な超高層ビルの年次推移を掲げた。


 イスラム教巡礼者を中心に1,300万人が訪れるサウジアラビアのメッカでは、ラスベガス並みのアメニティ設備を有するクロック・ロイヤル・タワー・ホテルが2012年に完成。高さは601メートルとブルジュ・ハリファには及ばないもののカーバ神殿を見下ろすこのタワーは世界最大の時計台(ビッグベンの6倍以上)を有し、塔の天辺には黄金の三日月が輝く。このホテルはアブラジ・アルバイト複合都市構想の一部に過ぎない。この複合都市は7つの巨大なタワー、150万uのフロアスペース、2つのヘリポート、巨大なショッピングモール、3万人の礼拝者を受け入れる礼拝所を有し、米国の2つの巨大ビルディング、ペンタゴンとラスベガスのパラッツオホテルを合わせた大きさとなる(The Economist June 26th 2010ほか)。

 2010年1月、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイに2004年に建設が開始されていた世界一の高層ビル約160階建ての「ブルジュ・ハリファ」が完成、4日に完成式典が開かれた。高さは828メートル、これまでの最高層だった台湾の「TAIPEI101」や最高のタワーであったトロントの「CNタワー」を大幅に上回った。「ブルジュ」はアラビア語で「塔」を意味し、経済危機のドバイ首長国を支援したハリファUAE大統領の名を冠した。「政府系企業のエマールが開発、韓国のサムソングループなどが建設を請け負い、日本の日立プラントテクノロジーも空調を担当した。」09年11月に表面化した政府系企業の信用不安を景気とする「ドバイ・ショック」の余波の中、「計800億ドルとされるドバイ政府と政府系企業の債務返済の見通しは立っていない。」(東京新聞2010.1.5)

 霞が関ビル(36階建て)は、1968年に完成し、東京が摩天楼の街に変貌する先駆けとなった高層ビルであるが、現場責任者として建築に当たったのは「二階さん」(二階盛氏)だったという(東京新聞2014.3.19)。

 なお、19世紀にさかのぼると、1884年に創立された米国の「ワシントン記念塔」(Washington Monument、169メートル、首都ワシントンD.C.の中心部に位置するナショナル・モールにそびえ立つ巨大な白色のオベリスク)が、1889年にフランスのパリに「エッフェル塔」(312メートル)が完成するまで世界で最も高い建築物だったし、なお、石でできた独立構造物としては世界で最も高いといわれる。

 さらに歴史をさかのぼると、イングランド東部リンカンシャー州のリンカン大聖堂は、中央の塔が1311年に完成した結果、160mの高さとなり、エジプト・ギザの大ピラミッド(146.94m)を抜き世界で最も高い建築物となった。しかし、尖塔は1549年の嵐で吹き飛ばされたため、高さ世界一の建築物は159mの聖オーラフ教会(エストニア)に移った。なお、160mの高さは、1884年にワシントン記念塔が完成するまで塗り替えられなかった。

 つまり、ピラミッド(エジプト)→リンカン大聖堂(英国)→ワシントン記念塔(米国)→エッフェル塔(フランス)の順に最高建築物は推移した訳である。

 その後については、1930年には米国ニューヨークでクライスラー・ビルディングが完成し、エッフェル塔は世界一高い建造物の地位を失った。しかし、翌年の1931年にやはりニューヨークにおけるエンパイアステートビルの完成により、世界一の座をさらに明け渡すことになる。

 対象となった既存のタワー等は44、高い順に所在都市名とともに掲げると、ブルジュ・ハリファ(ドバイ)、東京スカイツリー(墨田)、ロイヤル・ホテル・クロック・タワー(メッカ)、広州タワー(広州)、CNタワー(トロント)、オスタンキノタワー(モスクワ)、TAIPEI101(台北)、オリエンタルパールタワー(上海)、ペトロナスツインタワー(クアラルンプール)、ジョンハンコックセンター(シカゴ)、エンパイアステートビル(ニューヨーク)、マナラKLタワー(クアラルンプール)、世界貿易センター(倒壊)(ニューヨーク)、天津タワー(天津)、セントラルラジオ&テレビタワー(北京)、タシケントタワー(タシケント・ウズベキスタン)、ベルリンタワー(ベルリン)、マカオタワー(マカオ)、東京タワー(東京)、森JPタワー(東京)、スカイタワー(オークランド・ニュージーランド)、タリンテレビタワー(タリン・エストニア)、エッフェル塔(パリ)、AMPタワー(シドニー)、あべのハルカス(大阪)、横浜ランドマークタワー(横浜)、バルセロナタワー(バルセロナ)、リアルトタワー(メルボルン)、ドナウテルム(ウィーン)、ソウルタワー(ソウル)、福岡タワー(福岡)、プラハテレビタワー(プラハ)、ユーロマスト(ロッテルダム)、名古屋テレビ塔(名古屋)、オリンピックタワー(モントリオール)、空中庭園展望台(大阪)、プレイパークゴールドタワー(宇多津)、ブラックプールタワー(ブラックプール・英国)、海峡ゆめタワー(下関)、霞が関ビル(東京)、さっぽろテレビ塔(札幌)、ツインアーチ138(一宮)、東山スカイタワー(名古屋)、京都タワー(京都)、千葉ポートタワー(千葉)、通天閣(大阪)、ピサの斜塔(ピサ)である。

 図に併載した国宝及び重文の仏塔は、高い順に、東寺(教王護国寺)五重塔(京都市南区)、根来寺大塔(和歌山県岩出市)、薬師寺東塔(奈良市)、法隆寺五重塔(奈良県斑鳩町)、安楽寺八角三重塔(長野県上田市)、談山神社十三重塔(奈良県桜井市)である。

【コラム】東京スカイツリー建設を支えた技術

 世界一の自立式電波塔の東京スカイツリーには隅々に日本の技術の粋が凝縮されているといわれる。以下に個々の技術を担った企業とその技術内容を表で整理した。

東京スカイツリーの建設に関わった企業とその技術
分野・部品 企業と技術
設計 日建設計。1300年前に建立された法隆寺五重塔で使われた技術と同じ「心柱」という巨大な円筒が塔の中央を貫く。周辺の鉄骨部分とは別に揺れるので塔全体の揺れを最大4割減
施工 大林組。杭(くい)基礎は同社独自のナックル・ウォール工法
鉄骨 すべて形が違う約3万7000ピースを全国の鉄工所に特注。地上では三角形、上に行くに従って徐々に円形となる「そり」「むくり」という鉄骨の曲線を実現。神社建築や茶室、日本刀などに使われている日本の伝統的な形
ゲイン塔 神戸製鋼と佐々木製鑵工業(兵庫県)が共同開発した国内最高強度の円形鋼管を使用。500m以上の高さでの強風や地震に耐える強度を高度なプレス技術で実現
送信アンテナ 日立電線が高さ500m付近で設置作業
照明設備 パナソニック電工。オールLED化で消費電力4割減
エレベーター 東芝エレベーターなど。天望デッキまでのエレベーターは40人乗りで分速600m。通常のマンションのエレベーターの10倍の速さ。この容量と速度を両立するため「レール」と呼ばれる通り道はつなぎ目の誤差0.1ミリ以内
塔体以外のビルの地域冷暖房システム 東武エネルギーマネジメント。日本で初めて地中熱を利用
(資料)東京新聞2012.5.23

【コラム】世界一の高さ達成はバブル崩壊の前兆?

 毎日新聞コラム「水説:超高層ビルとバブル=潮田道夫」(2011.2.9)は世界一高いビルやタワーの競争に対し警告を発する海外記者の説を紹介している。

「旧約聖書によれば、人間が天にとどきそうなバベルの塔を建てるのをみて、神はその傲慢を怒り、人類を四散させて異なる言葉を話すようにしてしまった。」

 現代でも同じ。実例を新しいところからあげると以下だという。
  • 世界一の超高層「ブルジュ・ハリファ」(828メートル、アラブ首長国連邦ドバイ):完成間近の2009年金融危機
  • 「ペトロナス・ツインタワー」(452メートル、マレーシア首都クアラルンプール):1997年のアジア通貨危機
  • 「シアーズ・タワー」(442メートル、シカゴ):1974年の完成近く、オイルショック
  • 「エンパイアステートビル」:完成直前に大恐慌
 とすると、
  • 「東京スカイツリー」(634メートル、東京都墨田区):国債の暴落?

という連想も働くという。

(2006年11月27日収録、2008年6月9日仏塔追加、2009年10月17日東京スカイツリー高さ変更、2010年1月5日更新、5月31日プレイパークゴールドタワー名称修正、7月14日サウジのタワー、ペトロナスツインタワー、世界貿易センター追加、2011年1月17日更新、2月9日コラム追加、7月24日ツインアーチ138コメント追加、2012年5月22日東京スカイツリー開業、5月23日【コラム】東京スカイツリー建設を支えた技術を追加、6月14日あべのハルカス追加、2014年2月28日あべのハルカスを建設中から現役に変更、3月19日霞が関ビル追加、2015年9月22日ツインアーチ138コメントを新設の図録7222aに移す、2020年6月29日2016年〜19年の米国連続テレビドラマシリーズ「サバイバー:宿命の大統領」でよく映し出された「ワシントン記念塔」のコメント、2023年5月17日日本一となった主な超高層ビル、11月21日更新〜森JPタワー追加)


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