2024年1月1日に石川県で最大震度7を観測した能登半島地震で石川県内は死者240人(うち災害関連死15人)、安否不明15人と報道されている(2月1日現在)。2016年の熊本地震以来の大きな震災となった(図録4331参照)。地震に伴って発生した津波の高さは図録4363d参照。


 この地震の影響で震源を中心とした広い範囲の21府県約1万6千基のエレベーターが停止し、計14件の閉じ込めが発生したことを国土交通省が明らかにした(東京新聞2024.1.24夕刊、下図参照)。さらに警察の調べによると死因は圧死が92人ともっとも多かったが、救助が早ければ救えた低体温症・凍死も32人と多かった(下図参照)。


 2019年10月12日に静岡県伊豆半島に上陸し各地で記録的な大雨をもたらした台風19号により、東日本の広い範囲で甚大な被害が出た。死者・行方不明者は下表の通り。決壊した堤防は74河川140か所に上るという(東京新聞2019.12.29)。台風の進路と川の流れの方向が同じだった阿武隈川では流路沿いのほぼ全域で浸水した。このため、流域の福島、宮城両県で人的被害も大きくなっている。

2019年台風19号による被害者(単位:人)
死者 行方
不明
死者 行方
不明
死者 行方
不明
岩手 3 0 栃木 4 0 東京 1 0
宮城 19 2 群馬 4 0 神奈川 16 1
福島 32 0 埼玉 4 0 長野 5 0
茨城 2 1 千葉 12 0 静岡 3 0
*その他兵庫で死者1名 105 4
(注)10月25日の千葉と福島における記録的な大雨の被害者を含む。神奈川は船沈没の犠牲者を含む。
(資料)東京新聞(2019年12月29日朝刊)

 原則として都道府県が適用を決める災害救助法法の対象地域では、国と都道府県が市区町村に代わり避難所の運営や水、食料の提供などの費用を負担する。内閣府防災担当によると14日現在で災害救助法が適用された自治体の数は13都県315市区町村に上り、記録のある1995年の阪神大震災以降の自然災害で最多で、2011年の東日本大震災や18年の西日本豪雨を超えている(下表)。

災害救助法が適用された自治体の数
2011年3月 東日本大震災 8都県237市区町村
2018年7月 西日本豪雨 11府県110市町村
2019年10月 台風19号 13都県315市区町村
(注)内閣府防災白書から。台風19号は14日現在
(資料)東京新聞(2019年10月16日)

 2018年6〜8日の西日本を広域的に襲った豪雨被害(「平成30年7月豪雨」)は、次表のような大きな被害をもたらしている。末尾一覧表と照らし合わせると、豪雨災害としては、439人の死者・行方不明者を出した1982年「7,8月豪雨及び台風第10号」以来の大きな被害となっている。

2018年西日本豪雨の被害者(単位:人)
死者 行方
不明
死者 行方
不明
死者 行方
不明
岐阜 1 鳥取 1 高知 3  
滋賀 1 岡山 61 3 福岡 4  
京都 5 広島 108 6 佐賀 2  
兵庫 2 山口 3   宮崎 1  
奈良 1 愛媛 26 2 鹿児島 2  
221 11
(注)2018年7月29日午後6時現在、毎日新聞まとめ
(資料)毎日新聞(2018年7月30日)

3日間(72時間)の主な全国降水総量
億m3 災害 主な被害
2004年 482 台風23号と前線 京都や兵庫を中心に死者・行方不明98人
2011年 491 台風15号 宮城や愛知などで死者・行方不明20人
2017年 479 台風21号と前線 三重や大阪などで死者・行方不明8人
2018年 553 西日本豪雨 岡山、広島、愛媛などで死者200人超
(注)1980年以降に整備が進んだ地位域気象観測システム(アメダス)のデータにもとづき、牛山素行教授(静岡大)が算出した概算値
(資料)東京新聞(2018年7月17日)

 2018年西日本豪雨の際に3日間に降った雨量は過去40年最多の553億m3であり、全国の年間降水総量6,500億m3(国土交通省)の1割弱に当たる量が降った勘定となる(東京新聞2018.7.17)。

 2016年4月.14日、4月16日におこった熊本地震は死者・行方不明者267人を出す大きな震災となった。

 2014年9月27日午前11時53分ごろ、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火した。死者56人と戦後最悪の火山災害となった(次表参照)。

戦後の主な火山災害
年月 火山名 地域 被害
1948年
1〜11月
桜島 鹿児島 死者 1人
1947年8月 浅間山 長野、
群馬
死者 9人
1958年6月 阿蘇山 熊本 死者 12人、負傷者 28人
1979年9月 阿蘇山 熊本 死者 3人、負傷者 11人
1991年6月 雲仙・
普賢岳
長崎 死者 40人、行方不明 3人、負傷者 9人
2011年2月 霧島山 宮崎、
鹿児島
負傷者 42人
2014年9月 御嶽山 岐阜、
長野
死者 56人、行方不明 7人(10月16日現在)、負傷者 69人(10月1日現在)
(資料)東京新聞2014.10.2ほか

 我が国では、自然災害によって、毎年、尊い人命が失われている。図には、1945年以降の毎年の自然災害による死者・行方不明者数の推移を示した。世界の主な自然災害については図録4367参照。

 戦後、1940年代後半〜1950年代には、地震、台風などによって1000人以上の人命が失われる大災害が頻発した。

 5,000人を越す犠牲者と未曾有の被害をもたらした伊勢湾台風の年、1959年以降は、死者・行方不明者は、著しく減少していった。これは、治山・治水・海岸整備の他、観測体制、予報技術、災害情報伝達、避難体制など防災体制が充実した結果である。

 しかし、1995年に起こった阪神・淡路大震災では、6,437人と戦後それまでで最大の死者・行方不明者数をもたらし、さらに2011年には2万人近くの死者・行方不明者と、他を圧倒して戦後最大の被害となった東日本大震災が発生し、それにともなう福島第一原発の原子力事故はなお収束を見ていない。自然の力を侮ることはできないことを如実に示しているといってよい。

 近年の自然災害による犠牲者は、北海道南西沖地震、阪神・淡路大震災、東日本大震災が起った1993年、1995年、2011年を除くと、大部分が、土砂災害をはじめとした台風などの風水害、そして雪害によっている。

 以下に我が国における明治以降の主な自然災害の状況を一覧表として掲げた。


 関東大震災の死者・行方不明者数の従来の定説は1925年調査に基づき、14万2000人余りとされてきたが、2003年頃、新しい実態調査により焼死者数と行方不明者数のダブルカウントが明らかとなり、上図の数字に改められた(理科年表でも2006年版から修正)(門倉貴史「本当は嘘つきな統計数字 (幻冬舎新書)」2010年)。

(2006年6月15日収録、2007年8月9日更新、2009年6月30日更新、2011年3月16日更新、6月23日更新、2012年7月5日更新、2014年7月8日更新、10月2日御嶽山被災コメント追加、10月8日御嶽山更新、10月17日御嶽山年内捜索中止時、2015年8月23日更新、2018年7月8日〜17日更新、17日3日間降水総量、7月21日更新、2019年7月3日更新、10月16日台風19号被害、10月17日・19日・23日・11月12日・12月29日同更新、2020年7月9日更新、2024年1月6+日更新、1月25日能登半島地震エレベーター事故、2月2日能登半島地震死因、2月3日能登半島地震被害地図)


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