国民生活基礎調査の健康票では、体の具合の悪いところ(自覚症状)があればどんなところかをきいており、3年毎の大規模調査だけに、それぞれの症状についての有訴率が男女年齢別に細かく集計されている(調査票該当箇所はページ末)。これにより、何歳ぐらいになると加齢に伴う心身の衰えが目立ってくるのだろうかという高齢化にともなって今や国民的関心事になっている点が明らかとなる。

 調査票の選択肢には、熱がある、眠れない、肩こりをはじめ41の症状が掲げられているが、齢を重ねると多くなる症状の典型として「腰痛」と「もの忘れする」を取り上げ、それらの症状があると回答した年齢別の有訴率に関する2010年と2022年の結果について下図にあらわした(「目のかすみ」、「耳がきこえにくい」についてはそれぞれ、図録2130、図録2131も参照)。


 いずれの症状も加齢に伴って増えてくる点では共通であるが、人類が二足歩行にまだ十分に慣れていないから起こるとされる「腰痛」は比較的若い年齢からも増えてくるのに対して、人類誕生時の平均年齢では余り問題にはならなかった「もの忘れする」の方は、特に65歳以上になって急に増加する老人特有の症状となっていることが分かる。

 「腰痛」が85歳以上で80〜84歳より有訴率が低下するのは、それどころではない他の深刻な症状が増えるからであろう。

 2010年と2022年の結果を比較すると各年齢階級でほぼ全面的に状況が改善しており、特に60歳以上の高齢期で改善幅が大きいということが見て取れよう。「腰痛」が比較的若い世代でも改善が進んでいるのは機械化により筋骨労働が減っているせいであろう。

 若返りを示すとも見える高齢者の有訴率の改善が、最近だけの現象なのか。それとも長く継続している現象なのかを理解するため、腰痛や目のかすみ以外の2症状を加えた65〜74歳の有訴率の動きを、データが得られる1998年から3年ごとに追ったグラフを図録として冒頭に掲げた。

 指数で推移を見ると動きがよりはっきりするが、2007年までほぼ横ばいだった「もの忘れする」は、それ以降、急速に、かつ大幅に有訴率を低下させてきているのに対して、その他の3つの症状については、ほぼ、1998年以降、一貫して有訴率が低下してきていることが分かる。ただし、「腰痛」は「耳がきこえにくい」や「目のかすみ」と比べて有訴率の低下幅が小さい点が目立っている。

 「もの忘れする」は、認知症につながることが懸念される症状なので、近年、だんだんと認知症予防の意識が強まっていることから、また、高齢就業が広がり高齢者も「もの忘れ」していられない状況となったことから急速に改善していて来ているのではなかろうか。

 これに対して、「腰痛」は、人類固有の弱点なので高齢者の若返りだけでは改善するのが難しく、改善幅も小さいのではなかろうか。

 なお、2019〜22年の改善幅はすべての症状でそれ以前に比べて小さくなっている。これは2020年からの新型コロナの影響でウォーキングをはじめ健康維持にとって効果のある活動が縮減したためだと考えることができよう。

 高齢者の若返りを「具合の悪さの低減」からでなく、「運動能力の向上」の面から探った図録2168も参照されたい。極めて興味深いことに両者はコロナの影響を含めほぼ平行した動きを示している。


(2023年10月14日収録)


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