統計データが語る 日本人の大きな誤解 書評

月刊プリンシパル
(2014年6月号)
学校講話研究専門誌
〔本の話・話の本〕『統計データが語る 日本人の大きな誤解』
産経新聞
(2014年2月2日)
〔書評〕『統計データが語る 日本人の大きな誤解』本川裕著

 思い込みや誤解を解き、予想外のことを知る。統計データの力を豊富な具体例をあげ紹介している。著者はデータ分析のプロで、インターネット上で統計情報を集めたサイト「社会実情データ図録」を主宰。日本人の働き方、価値観にも統計で切り込み、日本の意外な強みを知ることができる。
 最近は国際学力調査でも「読解力」といえば、グラフや資料から情報を読み取る力だ。統計データの誤用や誤読についても章を設け、自治体の豊かさランキングなどが必ずしも実態を反映していない例をあげ、統計の正しい活用法を教えてくれる。
文藝春秋
(2014年1月号)
BOOK倶楽部特別篇 書評委員が選ぶ「わたしのベスト3」2013 池上 彰「思い込みを正す」

(一部引用)

 私たちの思い込みを正してくれる本としては、『統計データが語る日本人の大きな誤解』も読ませます。
 日本は公務員が多すぎる。もっと削減して「小さな政府」を目指さなければ。こんな議論が盛んですが、いわゆる先進国の集まりであるOECD(経済協力開発機構)加盟国25か国中、日本の公務員規模は最も少ないのです。日本は「世界一小さな政府」なのです。どうです。目からウロコでしょう。
 最近問題になる自殺の多さも、自殺率でみれば、増えているのではなく、元の水準に戻っただけであることがわかります。統計数字は、意外な事実を教えてくれるのです。
週刊エコノミスト
(2013年12月17日号)
〔書評〕『統計データが語る日本人の大きな誤解』 評者・中沢孝夫

(一部引用)

「謙虚」とも「自虐」とも言えるのだが、日本人のバランス感覚の悪さがよく分かる本である。著者は技術力、所得(経済)格差、政府の大きさ、長時間労働、自殺率……とさまざまな数字を示しながら、誤解が生まれ、広がる日本の「病(やまい)」を指摘している。
 本書によれば「日本ほど貧困者の少ない国はない」のであり、「格差」が拡大しているという事実もない。あるいは自殺者が増加していると伝えられるが、人口10万人当たりの自殺率のピークは1959年であったという。

(中略)

 確かに、賃金カット、リストラ、格差、貧困、過労死、孤独死、児童虐待、飢え……といった報道は事実であるにしても、「善意」によって「社会を改良しよう」と発言する識者たちは、ともすれば「深刻さ」を過大に訴える。そうしなければ目立たないからだ。社会運動家も学者も同じである。それゆえ「データの不正使用」が多いのである。役所も同様だ。自己の政策立案に都合のよいデータのみを強調する。

(中略)

 著者は「特に日本人は、何事も改善を図るという立場に立ちたがる」と指摘しているが、そういうことなのだろう。
 とはいえ著者のように率直なことはなかなか言いにくいものである。例えば「統計データが語るところによれば、自殺は社会のせいにすべきではなく、当人みずからの問題として克服すべき側面が強い」とか、「過労死への対策は、単純に経営者へのペナルティーを科すことでは解決せず」などと発言するには勇気がいよう。痛烈で楽しい本である。
週刊エコノミスト
(2013年12月3日号)
〔書評〕話題の本

 日本の女性教師比率は65%とOECDとG20諸国の中でサウジアラビア、トルコ、中国、インドネシアに次いで低い。日本経済が停滞しているといっても、東京都のGDPは韓国のGDPとほぼ同じ規模。日本の製造業は基本的に欧米に対し技術輸出超過国。特許出願件数は東京がシリコンバレーを凌駕。小泉改革は格差を広げず縮めた──。日本人が陥っている自信喪失の「原因」が統計データで一つ一つ覆されていく。うんちく好きに最適の1冊だ。



統計データが語る 日本人の大きな誤解 著者インタビュー

週刊プレイボーイ
(2014年7月7日号)

週プレnews”本人”襲撃連載コラム・サイトの該当ページ
〔”本”人襲撃〕『統計データが語る日本人の大きな誤解』(本川 裕)
「幸福度」の男女差が世界で最も大きいのは日本・・・・なぜ?


(一部引用)

本川 (幸福度について)女性のほうが幸せと感じている結果に多くの男性は驚かれたのではないでしょうか。

--- さらに驚いたのは世界各国との比較です。

本川 日本は世界で最も女性の幸福度と男性の幸福度にギャップのある国という結果が出ています。

--- なぜそんな結果になってしまったのでしょうか?

本川 この結果をひもとくデータとして「生まれ変わるとしたら男がいいか女がいいか」という調査結果があります。1958年から2008年までの50年間で「女に生まれ変わりたい女性」が44%も増えています。以前の日本の女性は雇用・資産相続などの問題で不利な立場にあったとされていますが、現在はその問題も改善されつつあり社会的地位は明らかに向上しています。このことがそのまま女性の幸福度の高さと直結しているとは言い切れませんが、一因であることは間違いないでしょう。

--- では、男性の幸福度についてはどうでしょうか?

本川 女性の地位が向上したとはいえ、主に働くのは男性でしょうから仕事のストレスなどは感じやすいと思います。ほかに注目すべきは、お隣の韓国も女性と男性の幸福度のギャップが5位と世界の中で上位であるという点です。日本と韓国の共通点である儒教思想に鍵があるのではないかと考えれます。

--- 具体的にはどういうことでしょう?

本川 「男は黙って女性や家庭を支えていかなければならない」という価値観が意識の中に植えつけられ、そのことによるプレッシャーも常に感じているのではないかということです。
新潮45
(2014年5月号)
〔Review INTERVIEW〕データから見る本当のニッポン


(一部引用)

私は地動説を唱えたガリレオ=ガリレイの研究姿勢がとても好きです。同時代の学者が理論だけで証明しようとしていた天文学を、毎晩毎晩飽きもせず望遠鏡で太陽や月星を観察することで、実際に黒点やクレーター木星の衛星を見つけ、それを自説の説得材料にした。常識と違うことを主張する際、今はデータこそが望遠鏡の代わりになり得るのだと考えています。メディアの皆さんにもそこをお伝えしたいな、と思います。

――例えば最近のケースでは?

(中略)イギリスの「エコノミスト」誌は、このこうしたデータ(旧ソ連の体制の方が良かったというウクライナ国民に対する意識調査のデータ−引用者)を出典も含めて紹介しましたします。これを知れば、無理やりウクライナをヨーロッパナイズしたところで政権運営がうまくいくはずない、ということがわかるはずです。特に新聞記者は、データが真実であるかどうか、現場で確認することも出来るでしょう。無視してしまうのはあまりにも勿体無い。この本をきっかけにどうぞ議論の武器を増やしてください、とお願いしたいです。
週刊教育資料
(2014年2月10日号)

校長先生向け情報誌
〔自著を語る〕通説に振り回されない!統計データの正しい見方

(一部引用)

統計データを将来につなげる

(中略)儒教道徳そのものの由来に立ち返れば、男子が読書に親しみ、師は師として敬うという儒教文化や、人間同士が心と形の両面から相互に尊重して付き合っていくという「礼」を重んじた行動様式の中にも、むしろ東アジアから世界へ向けての貢献の可能性を見出すことができるのではないでしょうか。

統計データの扱いを学ぶ機会を

(中略)統計データの必要性はますます高まっていきます。できれば専門家を養成する統計学だけでなく、小・中・高の学校教育の中でも統計データの扱い方や読み方を学ぶ機会をこれまで以上に多くつくっていってほしいと願っています。
週刊東洋経済
(2013年12月7日号)
[Books Trends] 『統計データが語る 日本人の大きな誤解』を書いた本川裕氏に聞く

(一部引用)

 日本の経済格差は拡大している、社会的ストレスが高くなったから自殺が増えた、学校は荒れている...。よく聞かれるこれらの通説は誤っているという。

−−統計データには隠された真実を明らかにし、誤解から解き放つ力があるのですね。

 仮説にあった統計データを選ぶのではなく、データそのものが語っていることに耳を傾ける。そうすると、世間一般でいわれている通説とむしろ逆だよ、ということがたくさんある。

 典型的なのは、経済格差だ。どんどん広がっていると、小泉政権当時から広く主張されるようになった。家計調査や国民生活基礎調査をはじめ、多くの統計データは、そうではなくむしろ狭まっていると語っている。(中略)広がったと見えるのは社会の高齢化のせいで、高齢世帯が多くなったという別の事情なのだ。

 年齢的な構造が変わっていないならそうは見えないことでも、構造が変わったためにそう見えることはたくさんある。人のライフサイクルの中で所得が上下するのは普通だ。社会を分析対象にするなら、いくつものやり方で分析しないといけない。簡単に一つでぱっと結論づけるようなことはできない。世界的に比較しても、日本は「適度な格差」といえると統計データは語っている。

(中略)

−−多様な分野で国際比較もしています。

 学級崩壊が進んでいるといわれるから、日本の授業では先生の話を聞いていない子どもが多いのだろうと思いきや、OECDの「生徒の学習到達度」調査によると、日本に熱血先生はそう多くないのに十分言うことを聞いているという。しかも、先生との関係も、ほかの先進国とは逆で、緊密性が高い。そういった意外なことがたくさんわかっている。

【本川コメント:この記事は全体に適切に私の発言をまとめて頂いているが、上の「しかも、先生との関係も、ほかの先進国とは逆で、緊密性が高い。」の箇所だけは、「ほかの先進国と同様に先生との関係が緊密でない、すなわち熱血先生が少ないにもかかわらず、授業では先生の言うことをよく聞いている」と喋ったつもりがやや誤解されてしまった。】

(中略)

−−OECDは成人版の学力テスト結果を最近発表しました。

 2011年実施で、読解力、数的思考力とも日本が1位だ。しかし、マスメディアの論調は、そんなはずはないと疑問視するものばかり。たとえば、ITで遅れているとか、欧米は移民が多いので低くなったのではとか。OECDは移民を除いた得点も発表している。それでは、数的思考力がスウェーデンに次ぐが、この「頭のよさ」は誇っていいはずだ。

 望遠鏡や顕微鏡は自然現象の観測手段として有用だが、統計データはその語りかけてくるものに耳を澄ませば、社会現象の観察手段として最も有効なのだ。