【コラム】Q&A:新型コロナウイルスとインフルエンザとの類似性と相違点について 独立ページ表示 新型コロナウイルスとインフルエンザとの類似性と違いを理解しておくことは、新型コロナウイルスの理解自体にとっても、また、インフルエンザのデータから新型コロナウイルスの状況を類推するためにも重要である。ここでは、この点についてのQ&Aを掲載しているWHO新型コロナウイルス状況報告46号(2020年3月7日)の特集記事を全文訳出した。
訳は仮訳であり、専門家のチェックを受けていない点に注意されたい。 新型コロナウイルスの流行が続く中で、インフルエンザとの比較があちこちで言及されている。両方とも呼吸器疾患を惹き起こすとはいえ、両方のウイルスには、広がり方を含め重要な違いがある。この点は、両方のウイルスのそれぞれに対する公衆衛生上の対策において重要な意味をもっている。
Q:新型コロナウイルスとインフルエンザ・ウイルスはどのように似ているか? まず、新型コロナウイルスとインフルエンザ・ウイルスは似たような症状をもたらす。すなわち、両方とも、無症状・軽症から重症・死に至る広い範囲の症状の呼吸器疾患を惹き起こす。
次に、両方とも接触感染、飛沫感染で広がっていく。その結果、同じ公衆衛生上の誰でもができる感染予防策、すなわち手洗いや呼吸エチケット(せきをするときはひじやティッシュにしてすぐそのティッシュを処分)が重要である。 Q:新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスはどんなところが違う? 伝染速度がふたつのウイルスで異なる点が重要である。インフルエンザは潜伏期間(感染から症状が出るまでの)が短く、継起間隔(次の患者に伝わる時間)が短い。継起間隔はインフルエンザが3日であるのに対して、新型コロナウイルスは5〜6日と見積もられている。このことはインフルエンザの方が新型コロナより素早く広がりうるということを意味している。
さらに、発症後初期3〜5日の伝染、または、たぶん前症状伝染(症状があらわれる前の伝染)がインフルエンザの主たる伝染であるのに対して、新型コロナウイルスの場合は、症状が出る24〜48時間前に伝染を広げる人がいることが分かっているにもかかわらず、現在のところ、これが主たる感染要因とは見えないのである。 感染力(1人の感染者が2次的に何人の感染者を生むかの数値)は新型コロナウイルスの場合2〜2.5とインフルエンザより高いと理解されている。ただ、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスについての推計はともに、状況や時期によって変わってくるので、このことが直接の比較を困難にしている。 インフルエンザ・ウイルスでは子どもが社会における重要な伝染要因である。新型コロナウイルスについて当初得られているデータでは、子どもは成人より感染しにくく、0〜19歳の罹患率は低い。中国における家庭内感染の暫定的なデータによれば、子どもへの伝染は子ども同士というより成人からであるようだ。 2つのウイルスの症状は似ているが、重篤な病気となる割合は異なっている。新型コロナウイルスに関するデータによれば、80%は軽症か無症状であり、15%は酸素吸入を必要とする重症、5%は人工呼吸器を要する重篤ケースとなっているようだ。こうした重症、重篤な感染の割合はインフルエンザ感染よりも高い頻度で観察されているともいえよう。 インフルエンザでの重症化リスクは子ども、妊婦、高齢者、特に慢性疾患や免疫抑制の状態にある患者で高い。新型コロナウイルスに関する現在までの我々の理解は高齢者や高齢に伴う状況変化が重症化のリスクを増すというものだ。 新型コロナウイルスの致死率はインフルエンザ、特に季節性インフルエンザより高い。本当の新型コロナウイルスの致死率を十全に理解するには時間が必要であるが、今のところ得られているデータでは、粗致死率(報告感染者数で報告死亡者数を割った数字)は3〜4%であるが、感染致死率(実際の感染者数で報告死亡者数を割った数字)はもう少し低いだろう。季節性インフルエンザでは、致死率は0.1%以下である。しかし、致死率が医療へのアクセスと医療の質によって大きく左右されることは言うまでもない。 Q:新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスにはどんな予防・治療が可能? 新型コロナウイルスについて、中国では数多くの治療法が試されているし、20以上のワクチンが開発途上であるが、今のところ、認証されたワクチンや治療法はない。インフルエンザについては治療薬もワクチンも利用可能であるのとは対照的である。インフルエンザのワクチンは新型コロナウイルスに対して有効ではないが、インフルエンザ・ウイルスの感染を防ぐためには毎年ワクチンの予防接種をすることが強く推奨されている。
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