ミュンヘン再保険やIDSR(国連国際防災戦略)は東日本大震災の経済的損失額を2,100億ドル(16.8兆円)と見積もっており、これは、阪神・淡路大震災の11.8兆円、ハリケーン・カトリーナの11.5兆円(ともに2011年価格)を上回って過去最大となっている(IDSRでは阪神・淡路大震災よりハリケーン・カトリーナの経済的損失額の方が大きいと見積もっているなど東日本大震災以外では両資料で若干の違いがある)。 1980年以降毎年の経済的損失額の推移を見れば、その規模が徐々に大きくなっていることが見て取れる。 参考のために国連国際防災戦略(ISDR)が依拠している災害データベースにより、1970年以降の世界の自然災害の死者数と経済的損失額の推移を比較した図を以下に掲げた。 これを見ればうかがえるとおり、死者数は特段大きく増えているわけではなく、世界人口の増加を考慮に入れれば、自然災害の死亡率はむしろ減少しているといえる。これに対して、日本や米国といった先進国を襲った自然災害によって経済的損失額は容赦なく拡大して来ている傾向が明かである。
もともと経済規模の大きくない国での自然災害は死者数規模では巨大でも経済的損失額の見積もりは相対的にそう大きくならないのに対して、日本のような経済発展が著しい国の地震災害は死者数に比して経済的損失が大きくなる。またタイの洪水で示された通り、発展途上国でも世界の生産ネットワークの結節点になっている場合は、やはり、経済的損失額がふくらむ傾向にあるといえる。 自然災害は先進国、途上国を選ばない。一方で富の世界的蓄積やグローバル化は止まることを知らない。そこでこうした状況が生まれてきているのだと考えられる。 主要な自然災害の経済的損失(1980年以降)(図の元データ)
(資料)The Ecomomist January 14th 2012(原資料は、ミュンヘン再保険) (2012年1月23日収録)
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