2011年の東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発の過酷事故の影響で日本の原子力発電量が激減したばかりでなく、世界で原子力発電が衰退に転じたのかをデータで確かめようとして作成したグラフを掲げた。

 図には日本と日本を除く世界、及びOECDの原子力と天然ガスの発電源割合の推移を1960年から追った。OECDは先進国全体の推移を見るために掲げている。

 福島第一原発事故が起こる以前の2000年代半ばには温暖化対策を兼ねていわゆる「原子力ルネッサンス」が喧伝されていた。しかし、発電源割合の推移を見る限りは、世界では1991年、OECDでは1995年、日本では1998年をピークに原子力の割合は低下傾向をたどっていた。原子力は、すでに、他と比べ優位性のある発電方法ではなくなりつつあったともいえる。

 日本の場合は2011年から一気に原子力の割合はゼロに近くなった点が印象的であるが、日本を除く世界やOECDの動きは2011年の直後に大きな落ち込みはなく、それまでの傾向が延長されているに過ぎないようだ。逆に、低下傾向が和らいだとも見える。これは下で見るような天然ガスの調達難によるものかもしれない。

 日本における原発事故の影響は他国ではただちに原発の停止と言うことにはならず建設計画や廃炉計画が変更となるにすぎないだろうから、もう少し長期の動向を見なければならないかもしれない。

 一方、日本では、原発による発電の停止を補ったのは天然ガスによる発電である。天然ガスの発電割合は2011年以降一気に高まった点がデータからも明らかである。ただし、原発事故の以前から天然ガスの割合は、世界、OECDと同じように日本でも高まる傾向にあったことも図から明らかである(図録4050参照)。2011年以降、日本の天然ガス割合が急上昇したのに対して、日本を除く世界やOECDでは、むしろ、低下傾向となったのは、日本の天然ガス需要増との競合による可能性が考えられる。

(2017年5月13日収録)


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