2020年の労災死は802人であり、減少を続けており、過去最少を更新した。

 厚生労働省「労働災害発生状況」は労働者死傷病報告等を契機として所轄労働基準監督署が調査により把握した死亡者数の統計である。これをもとに労働災害(労災)で死亡する人の数の推移を追ってみよう。

 労災で死亡する人の数は高度成長期以降減り続けている。

 1960年以降、経済の高度成長が本格化すると労災死は1955年の約5,000人から6,000人台へと増大した。労災死亡者数のピークは1961年の6,712人である。1961年度の経済成長率は12.0%と高度成長期前期のピークを記している(図録4400)。労災死の第2のピークは1963年の6,506人である。

 やはり、1964年の東京オリンピックへ向けた建設ラッシュが労災死の増大に影響していたと見られる。ピークである1961年の死亡者数のうち建設業が39.5%と高かった。なお、2017年の建設業比率は、33.0%である。2016年の31.7%から上昇しており、2020年の東京オリンピックへ向けた建設ブームが影響している可能性があろう。

 高度成長期の1960年代には6000人以上だった労災死亡者数は、1973年のオイルショック以降大きく減る傾向に転じた。1973年に6,000人を切り、1974年に5,000人を切り、1975年に4,000人を切り、1981年に3,000人を切った。1980〜90年代は2000人台の時期が比較的長く続いたが、前年から大型金融機関の破綻が相次ぎバブル期に終止符が打打たれた1998年以降は2,000人を切り、ついに2015年からは1,000人を切り、労災死は3桁台となっている。

 下に述べたように外国人の労災死亡率が全体の2.2倍だとするとバブル崩壊前後の数字に近い。

 労災死と同じように、他殺死、食中毒死が以前と比べ大きく減っている点については、ぞれぞれ、図録2776、図録1964参照。

 下には、参考までに、業種別、事故の型別の死亡者数を掲げた。業種別では建設業における死亡者が258人と最も多く製造業の136人が続いている。事故の型別では、墜落・転落が191人と最も多く、交通事故(道路)が164人でこれに次いでいる。過去との比較では、基本的には、多かった業種や型ほど減少している。

 最近は、高齢者の労災死が増えていることが課題として指摘される。下には、厚生労働省「労働災害発生状況」の速報から東京新聞が独自集計した結果を事例とともに掲げた(厚生労働省公表分には年齢別集計はない)。


 高齢ドライバーが引き起こす交通事故が問題となっているが、労災においても、高齢者の就業が増えているので、これまで余り考慮されて来なかった高齢者向けの対策が必要とも言えよう。

(2019年初掲載時のコメント)

 外国人技能実習生が2015〜17年の3年間で計69人死亡していたことが新しい在留資格制度を創設する入管難民法改正案を審議していた2018年12月6日の参議院法務委員会の場で判明した。技能実習生の人数は同期間に年平均21.2万人だったので、割合は10万人当り10.8人となる。すべてが労災死だとすると一般労働者の6倍の高さの労災死亡率となる。

 実際は労災ばかりではなかった。厚生労働省の労災統計によると10万人当たり労災死(2014〜16年度)は全体で1.7人に対して技能実習生は3.7人となっており、2.2倍の高さである(毎日新聞2018.1.15)。

 上の参議院法務委員会で野党議員が技能実習生の死に溺死が複数あることを取り上げ、これはどんな死ですかと総理に質問(難詰)していた。あたかも、日本人の労災には溺死がありえないかのような口調であり、違和感を感じた。厚生労働省の労働災害発生状況によれば、2017年の「おぼれ」による労災死(溺死)は38人となっている(2018年は35人)。
 

(2019年5月21日収録、2022年5月30日更新、高齢者の労災死)


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