日本は仕事のストレスの多い国かどうかについて2005年のISSP調査による結果は図録3274や図録3276で分析した。仕事のストレスの客観的背景をなすジョブストレイン(job strain)、すなわち仕事の負担・緊張の程度とその時系列変化についてOECDの労働白書に引かれたデータを図示しよう。

 ジョブストレイン(job strain)は、仕事上の要求水準が労働者が持っている保有資源を項目数的に上回っている労働者の比率であらわされる。ここで要求水準は時間要素(長時間労働、労働強度、フレキシビリティ)、健康リスク(仕事の危険度、重労働の程度)からなり、保有資源は、仕事の自由度、OJT・OFF-JTの研修機会、社会支援(同僚や労働監督機関からの助け)などからなる。

 このデータは、2015年段階では33か国のOECD諸国を比較している。ジョブストレインを経験している人の割合は、日本は31.2%であり、上から8位と仕事上の条件の厳しい国と判定されている。

 主要先進国(G7)では、条件の厳しい順に、日本、イタリア、ドイツ、英国、フランス、(カナダ2005年)、英国の順となっており、日本は最もジョブストレインが大きくなっている。

 ジョブストレインの小さな国としては、ノルウェーが最も小さく、これにフィンランド、デンマークと北欧諸国が続いている。これらは幸福度の高い国としてもしばしば取り上げられる。仕事上の条件と幸福度は相関しているのかもしれない。

 逆にジョブストレインの大きな国としては、ギリシャが最も大きく、トルコ、ハンガリー、スペイン、ポルトガル、スロバキアと続いている。東欧、南欧の諸国が多いのが特徴である。

 2005年から2015年にかけての変化を見ると、ほぼすべての国でジョブストレインは小さくなって(スウェーデンだけ例外)、仕事環境は改善方向にあるとみなすことが可能である。

(2021年12月29日収録)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 労働
テーマ
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)