非正規雇用であると結婚しにくなり、このため、非正規雇用の増加が少子化の要因のひとつとなっているとされる。

 正規・非正規別の未婚率の状況をグラフにした。この点についての就業構造基本調査(総務省統計局)からの組み替え集計の結果(2002年)を図録3250で掲げたが、ここでは2010年に行われた厚生労働省の調査の結果を使用した。

 確かに男性就業者を正規と非正規とで比較すると未婚率は非正規が高い。特に30歳代で差は大きく非正規の未婚率は75.6%と正規の30.7%の約2.5倍となっている。40歳代の男性非正規就業者であると45.7%と半分近くがなお未婚というデータとなっており、非正規の増加は男性の生涯未婚率の上昇にも影響していると考えられる(生涯未婚率の動きは図録1540参照)。

 女性の場合は男性と逆であり正規就業者の未婚率の方が非正規就業者の未婚率より高い。女性30歳代で正規就業者の未婚率は46.5%と非正規就業者の22.4%の2倍以上となっている。これは女性が正規就業者として働き続けるためには独身を通している必要があるという状況を示しているように見える。

 しかし、女性の場合は、逆の因果関係(雇用形態が配偶関係の原因なのではなく配偶関係が雇用形態の原因)、すなわち結婚すると、あるいは結婚して子どもができると、正規から非正規に働き方を変える場合が多いから、こうした結果となるという側面も大きい。

 こう考えると、女性の場合は、現状の子育てと正社員就業が両立しないという好ましくない状況が変わらないとしたら、非正規が増えた方が婚姻率、出生率があがる側面もあるということになる。

 正規・非正規(雇用形態)と未婚・婚姻(配偶関係)との因果関係は前者だから後者という側面(A)と後者だから前者という側面(B)とがありえる。男性の場合はAと解されるが、女性の場合はAでもありBでもあると解釈できるのである。

 そうだとすれば、論理的には、男性の場合も、Bの側面、例えば、独身でいたいから(結婚したくないから)非正規のままでいるという選択をしているという側面もゼロとはいえないであろう。

(2012年9月5日収録)


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