ケインズは1930年に技術進歩によって100年以内に世界は「1日3時間勤務」や「週15時間労働」の世界になると書いたそうである(ダニエル・サスキンド「World Without Work」p.22)。必要なものの生産に要する労働時間が減っていけば、限りない欲求の亢進によって必要なものがそれ以上に増えない限り、労働時間は少なくて済むはずである。もちろん、働かずに消費するだけの人間をますます少数の働く人間が支えるという方向に極端に進まない限りであるが。

 時間当たりのGDPで測った労働生産性が高い国ほど平均労働時間が少ないことを示す相関図を掲げた(回帰線を薄いオレンジ色で示した)。確かにケインズが予想した状況に少しは近づいていると感じられるデータである。

 ヨーロッパの中では、ドイツ、デンマーク、オランダといった国は年間労働時間が短い国として知られているが、労働生産性の高さがそれを可能としていることは確かであろう。他方、ギリシャは働かない民族のように思われているが、労働生産性の相対的な低さに見合うだけ多く働いていることが分かる。

 日本は原データではニュージーランドやチェコと近い位置にあり、生産性に見合っただけ短い労働時間を実現しているように見える。ただ、年間労働時間のデータがOECDのEmployment Outlookと同様に事業所統計によっているからだと考えられる。他国と同じ労働力調査ベースの数字を「日本2」として別個掲げたが、こちらでは生産性以上に働いている結果となっており、香港、台湾、韓国などの東アジア諸国との共通性が目立つ結果となっており、真実性が高い(年間労働時間の日本データの特殊性については図録3100参照)。

 回帰線の上方に位置する労働生産性の割に労働時間が多い国としてはそうした東アジア諸国に加えて、カンボジア、ミャンマーといった貧困国、メキシコやコスタリカといった中米諸国、あるいは米国、アイルランドなどが目立っている。

 こうした地域は儒教道徳や米食(注)などの影響もあって勤勉にはしりがちであるか、物欲が深く足るを知らないかのどちらかだろう。

(注)米食民族はコメでタンパク質の必要量を摂取しようとするのでどうしてもカロリー超過に陥りがちであり、その分、エネルギー発散のため不必要な活動にまで熱心となる(図録0218参照)。

 アイルランドはやや特異値であり、過当にGDPが多くなっている可能性があろう。

 逆に回帰線の下方に位置する労働生産性の割に働かない国としては、ブラジルをはじめとする南米諸国、アイスランド、オランダ、デンマーク、ドイツといった中欧北部地域の国が目立っている。

 こうした地域は、ものが不足していても遊んでしまう人が多いのか、不必要な労働を切り詰めるのが好きな人が多いのかなのであろう。

図の対象となっている67か国は、カンボジア、ミャンマー、メキシコ、マレーシア、シンガポール、バングラデシュ、コスタリカ、南アフリカ、香港、タイ、中国、ベトナム、フィリピン、インド、パキスタン、韓国、マルタ、ポーランド、インドネシア、ギリシャ、コロンビア、台湾、チリ、ロシア、ハンガリー、ペルー、スリランカ、イスラエル、ラトビア、ポルトガル、エストニア、リトアニア、クロアチア、トルコ、日本2、ルーマニア、キプロス、チェコ、米国、ニュージーランド、アイルランド、スロバキア、日本、オーストラリア、イタリア、ブラジル、エクアドル、カナダ、アルゼンチン、スペイン、英国、フィンランド、スロベニア、ブルガリア、オーストリア、スウェーデン、スイス、ウルグアイ、ベルギー、ルクセンブルク、フランス、アイスランド、オランダ、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、ナイジェリア。

(2023年6月14日収録)


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