2023年は3年に一度の介護報酬の改定時期となっている(介護報酬の改定率の推移については図録2058参照)。改定のたびに介護従事者の低い給与の改善の必要性が議論される。ここでは、OECDの資料から介護給与の国際比較のデータグラフを掲げ、日本の水準が高いのか低いのかを観察してみよう。

 国際比較は、在宅介護および施設介護の介護事業所の給与が一般の事業所の平均給与の何パーセントに当たるかの指標で行っている。

 なお、参照のため、介護と同じケア分野である教育と医療の給与水準をプロットしている。同じケア分野だとしても介護は教育や医療よりも給与水準が低くなっている。これは、介護は専門性が低いとみなされやすく、職業としての成熟度がなお低いからだと思われる。

 OECD平均では、在宅介護の給与水準は79.8%であり、施設介護の給与水準は81.2%となっており、全分野と比べて2割前後給与水準が低くなっている。

 介護給与の低さは介護職の女性比率や移民比率の高さとも関連していると考えられる(介護労働者の女性比率・移民比率は図録2063)。

 日本の介護の給与水準は、在宅介護が85.8%、施設介護が73.0%となっており、在宅介護はOECDを上回っているが、施設介護では逆にOECD平均をかなり下回っている。もっとも在宅介護の時給が介護サービスの実施時間当たりであり、対象者宅までの移動時間や待機時間が考慮されていないため、こうしたデータとなっている可能性があろう。

 在宅介護の時給計算は国により算出法が異なる可能性があるので各国比較は施設介護で行った方が適切かもしれない。実際、原資料のグラフでも施設介護の給与水準の順に国がソートされている。

 施設介護の給与水準が最も高いのはトルコであり、唯一、分野平均を上回っている。日本は対象国29か国のうち24位なので、やはり、介護給与の水準は低いと言わざるを得ないだろう。

 施設介護の給与水準で、どんな国で介護給与の水準が高く、どんな国で低いのかを見ると、概して、主要先進国で水準が低いのが目立っている。例えば、米国は最下位となっている。イタリアやフランスも日本より水準が低い。これは、主要先進国では全分野の給与水準が相対的に高いからとも考えられる。国によっては、介護給与が低いのは、国内の性・人種・民族の格差と職業選択がむすびついているからという可能性もあろう。

 反対に、トルコやスロバキアなどで介護給与の水準が高いのは一般の給与水準がそれほど高くないせいであろう。

 先進国の中でもスウェーデンやノルウェーといった北欧諸国やドイツあるいはオランダでは介護給与の水準が高く、これは、介護労働者の職業的地位が確立しているためという印象である。

 図で対象としているのはOECD29カ国は図の左からトルコ、オランダ、スロバキア、オーストリア、ギリシャ、スイス、スロベニア、リトアニア、スウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルク、ドイツ、ラトビア、デンマーク、アイスランド、チェコ、ポルトガル、ポーランド、アイルランド、フィンランド、ハンガリー、英国、ベルギー、日本、スペイン、フランス、エストニア、イタリア、米国である。

(2023年10月29日収録)


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