結局のところ新型コロナの被害が大きかったのはどこだったのだろうか。そこでOECDの報告書から新型コロナ感染症で亡くなった人数を人口10万人当たりで47か国について比較したグラフを掲げた(主要国の推移については図録1951d参照)。

 2020年から2022年までで47か国中もっとも10万人当たりの新型コロナ感染症による死亡率が最も低かったのはノルウェーの38人、最も高かったのはペルーの647人と差が大きかった。日本は46人でノルウェー、インド、ニュージーランドに次ぐ下から4位と世界の中でも新型コロナによる死亡率は低かった。

 主要国の順位と10万人当たりの死亡者数を掲げると以下の通りである。

 日本 46人
 韓国 62人
 カナダ 128人
 ドイツ 200人
 フランス 257人
 英国 313人
 米国 325人
 イタリア 325人

 主要国だけ取ってみても、10倍近い差があったことが分かる。

 大陸別の傾向を見ると、インド、日本、インドネシア、韓国などアジア諸国、あるいはニュージーランド、オーストラリアといったオセアニア諸国は死亡率が低くなっているのが目立っている。

 これに対して、ヨーロッパや南北アメリカは死亡率が概して高かった。ヨーロッパの中でもブルガリアやハンガリーなど東欧は400〜500人と特に死亡率が高かった。

 もっともヨーロッパの中でもアイスランドは50人、オランダは131人と低く、北米の中でもカナダは128人とそれほど多くなく、国別の違いが大きいことが分かる。

 新型コロナによる死亡は、新型コロナ感染症を死因とする死亡だけでなく、ワクチン接種による死亡、新型コロナの蔓延により病院治療が逼迫し救急治療や入院治療が受けられずに死亡した場合、さらに社会の混乱、在宅強制による自殺増などを含めて間接的な死亡もあった(逆に出歩かないことによる交通事故死の減少もあったが)。

 こうした間接的な死亡も含めた死亡増については、超過死亡が計算されているが、同じことが平均寿命の変化幅の過去の傾向からの下方バイアスによっても知ることができよう。

 そこで、ページ下に、新型コロナの影響が大きかった2019〜21年の平均寿命の変化(多くの国でマイナスを記録)をそれ以前の約10年間の平均寿命の変化(ほとんどの国でプラス)と比べた図を掲げた。

 新型コロナによる死亡率が高かった国では、平均寿命も大きく落ち込んだ。あるいはもっと正確には、過去の平均寿命の伸びからのマイナス幅が大きかったことがうかがえよう。

 日本の場合、2010〜19年に平均寿命は1.5歳伸びるという傾向にあったが、2019〜21年には0.1歳しか伸びなかった。つまり、過去の動きからは2019〜21年の2年間に0.3歳(=1.5歳÷9×2)寿命が伸びていてもよかったはずであるのに、実際は0.1歳しか伸びなかったので0.2歳分のマイナスが新型コロナの影響と見られるわけである。

 OECD諸国が対象なのでロシアが図に含まれていいないが、ロシアの平均寿命も2019〜21年に男4.0歳、女3.4歳の低下を見ており(図録8985参照)、上の図にあらわせば最低レベルである。


(2024年2月28日収録、3月17日平均寿命の変化図追加)


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