図録5120では、日本の少子化対策を目的とした児童手当など世帯補助が先進国中最低レベルであることを示した。ここでは、それが、出生率(合計特殊出生率TFR)とどう相関しているかをみることとする。少子化対策が出生率の回復に寄与しているかは関心がもたれるところであるのでこの図録を作成した。日経新聞05年1月6日でも同様の図が掲載されているが取り上げられている国が主要国に限られている。

 使った家族・子供向け公的支出のデータはOECDの社会支出データベースによるものであるが、データの解説は図録5120を参照のこと。

 対象国は先進国(OECD高所得国)24カ国であり、家族・子供向け公的支出の対GDP比の高い順に掲げると、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オーストラリア、アイスランド、オーストリア、フランス、フィンランド、英国、ベルギー、アイルランド、ニュージーランド、ドイツ、オランダ、ポルトガル、スイス、ギリシャ、イタリア、カナダ、スペイン、日本、米国、韓国である。

 結果は、おおむね少子化対策レベルの高い国は出生率も高いという傾向が見られるが、当てはまり度は高くない(R2 = 0.2794)。米国のように、少子化対策支出レベルは小さいが出生率が高い国、逆に、オーストリアのように少子化対策支出レベルは高いが出生率は低い国がある。米国など移民によって出生率が高いのでそもそも少子化対策が必要ないのかも知れない。

 日本、韓国やスペイン、イタリアといった南欧諸国で少子化対策支出も出生率も低く、北欧諸国で両者ともに高いという点が目立っており、これらの国だけ見ると、政策の実施の有無が出生率水準に影響しているようにみえる。

 なお、図録1582には、日本を含む6カ国について、両者の時系列推移の関連を追跡したので参照のこと。

 さらに、この図録とセットの図録1586には、ここでのように少子化対策そのもののレベルと出生率との相関ではなく、高齢化対策との比較における少子化対策の相対レベルが、出生率(合計特殊出生率TFR)とどう相関しているかを見た。こちらの方が、当てはまり度が高く、蓋然性も高い。

(2005年2月8日収録、3月22日タイトル変更、2007年7月21日更新) 


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