これまでの長期人口推移については、歴史人口学の鬼頭宏(2007)が整理した日本の人口の超長期推移をグラフにした(改訂前は鬼頭宏(2000)を使用)。これを見ると日本の人口は、大きく見て、増加と停滞の時期を何度か繰り返してきた。また、これに最近の将来人口推計をつなげてみると近代の人口爆発は21世紀に入り一転して急激な減少へ向かうことが明らかである。

 新たに発表された令和5年度の将来人口推計では2100年の人口が前回推計の5,972万人から6,278万人へと上方修正された。合計特殊出生率が最近、予想以上に低下しているので下方修正を予想していたが、その反対だったのは、流入外国人の予想人口が年10万人程度上方修正されたからだという(東京新聞2023.4.27)。2100年時点で、総人口に対する外国人比率は現在の2%から15%以上に増えている。なお、今回は前回なかった百年後の2120年の推計人口が参考値として示されたが、5000万人を下回る数値だったのが印象的である。

 縄文時代・弥生時代の人口数は遺跡数等からの推計によっているが、単純な増加ではなく、早期(8100年前)・前期(5200年前)から中期(4300年前)にかけて急増した後、後期(3300年前)・晩期(2900年前)にかけて急減し、その後、弥生時代(1800年前、西暦200年頃)に入って、再度、急増している。

 末尾に長期的な気温の変動の推移を掲げた(ちなみにこの図は、およそ2700年前に寒冷化が進み、東北地方のサトイモ栽培が全滅したのに伴って、サトイモをかたどった遮光器土偶も貯蔵サトイモの腐敗=病魔から守護する呪具としての約500年間続いた役割を終えて消滅したことを裏づけるデータとして竹倉史人「土偶を読む」に掲げられたものである)。

 1万年前日本列島の平均気温は現在より約2度低かったが、6000年前には現在より1度以上高くなった。この結果、東日本は、ブナを中心とする冷温帯落葉樹林は後退し、代わってコナラ、クリを中心とする暖温帯落葉樹林が広がり、西日本はカシ、シイの常緑照葉樹林となった。木の実の生産性は照葉樹林より落葉樹林、特に暖温帯落葉樹林が圧倒的に高いため、こうした温暖化により東日本を中心に日本の人口は急増したといわれる。氷河が溶けて海面が上昇し、日本列島の海に面した平野部は深くまで海が入り込ん奥東京湾などを形成したのもこの高温期のことである(いわゆる縄文海進)。

 4500年前から気候は再度寒冷化しはじめ、2500年前には現在より1度以上低くなり(ピーク時より3度低くなり)、日本の人口の中心であった東日本は暖温帯落葉樹林が後退し、人口扶養力が衰えた。そしてまた、栄養不足に陥った東日本人に大陸からの人口流入に伴う疫病の蔓延が襲いかかり、日本の人口は大きく減少したと推測されている。

 弥生時代以降、稲作農耕の普及と国家の形成に伴って、人口はめざましく伸長した。歴史時代にはいると人口推計の方法は戸籍など文献資料が中心となる。8世紀を過ぎて人口成長率は落ち、10世紀以降は停滞的となったとみられる。理由としては、律令制的な水田開発に代わって主流となった荘園領主の土地開発が限界に達したためと考えられる。

 16〜17世紀は、農耕の開始に次ぐ人口革命の時期である。戦国大名の規模の大きな領内開発、小農民の自立に伴う「皆婚社会」化による出生率の上昇などが主たる要因と考えられる。18世紀に入るとこうした動きは限界に達する。江戸、大坂といった新たに誕生した巨大都市は、高い未婚率と衛生状態の悪さから人口のマイナス要因となっていた(都市蟻地獄説)。かつての大都市の平均寿命の低さについては図録7254参照。16〜17世紀の人口急増に伴って原野開発によるたんぱく源減少で日本人の身長が縮んだという説については図録2182a参照。

 古代・中世・近世を通じた人口とGDPの動きについては図録1150a参照。

 明治維新以降、近代の人口爆発は、出生率が高いまま死亡率が低下したためもたらされる(いわゆる人口転換)。江戸時代に3000万人程度であった日本の人口はそれ以前の長い時間の流れの中では極めて短期間に、また第2次世界大戦の惨禍にもかかわらず2008年には1億2,808万人のピークにまで到達した。

 死亡率の低下スピードは低くなった後も出生率は低下を続け、2009年からは人口減に転じたが、将来人口推計によれば、今後、さらに人口が急減していくとみられている。そして一時期急増した人口が高齢者となって人口の大きな構成要素となるため、人口爆発の過程で5%を切っていたこともある65歳以上人口比率(高齢化率)は、2008年に22.1%となり、将来、2100年頃には40%となると推計されている。

 なお、地域別人口分布の超長期推移については、図録7240、図録7242参照のこと。また、縄文時代以降の食生活の超長期的変遷については図録0277参照。日本人の身長の超長期推移は図録2182a参照。

(文献)
鬼頭宏(2000)「人口から読む日本の歴史 (講談社学術文庫)
鬼頭宏(2007)「[図説]人口で見る日本史」PHP
深尾京司・中村尚史・中村真幸編(2017)「岩波講座日本経済の歴史1中世


(2004年6月22日収録、2007年2月19日更新、2012年2月9日将来推計人口を新推計に更新、2013年3月19日原資料を鬼頭(2000)から鬼頭(2007)に変更、2014年12月14日縄文海進の記述追加、2015年10月1日図の2000・08年人口のマークを小丸からダッシュに訂正、2017年4月12日社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」により改訂、12月2日730〜1600年について新資料により改訂、2021年9月7日長期気温推移図、2023年4月26日令和5年推計で将来人口更新)


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